2021年06月25日 1679号

【沖縄北部 土地規制法の弾圧先取り チョウ類研究者宅 家宅捜索 戦争準備の市民抑圧NO】

アキノ隊員を狙い撃ち

 6月4日沖縄県警は、沖縄県の米軍北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)のメインゲートで米軍車両や軍雇用員らの通行を妨害したとして威力業務妨害の疑いでチョウ類研究者の宮城秋乃さん(通称昆虫救助隊アキノ隊員)の自宅を家宅捜査した。

 宮城さんは沖縄島中部の浜比嘉島出身。沖縄科学技術大学院大学でチョウ類を研究する鱗翅(りんし)学会会員だ。2011年から東村(ひがしそん)高江への新しい米軍ヘリパッド建設などで貴重な自然が破壊されていることに疑問を抱き、やんばるの現場で自然保護活動を続けてきた。

 国頭村(くにがみそん)から東村に広がる米軍北部訓練場返還地を含むやんばるの森≠ヘ5月10日、IUCN(国際自然保護連合)が世界自然遺産登録への候補地に選定勧告した。しかし、隣接する北部訓練場は、オスプレイなど最新鋭機専用のヘリパッドを多数建設し、基地機能は強化されてきた。今も米海兵隊、年間のべ数千人が密林環境下の「脱出生還訓練」を続ける。世界自然遺産候補地であれ、米軍が日常的に境界など無視して戦闘訓練を行っているのは明白だ。

 宮城さんは、返還された北部訓練場跡地の森に入り、米軍が訓練で使用し廃棄した戦闘食レーション(携帯食糧)のゴミ、ペットボトル、銃弾、薬莢(やっきょう)、コバルト60を含む放射能汚染物質の電子部品などを回収しては、米軍に返還してきた。沖縄県警に対しては、それらを回収するよう再三抗議してきた。返還後の米軍廃棄物の撤収・現状回復義務は日本政府が負う。ところが米軍も県警も、宮城さんからの廃棄物回収の要請にも一切無視を続けてきた。

 にもかかわらず、県警の捜査員ら約10人は宮城さんの自宅内や倉庫を捜索。車や書籍類などを写真撮影し、タブレット端末やパソコン、ビデオカメラなどを押収した。宮城さんが北部訓練場返還地で拾い集めゲート前に置いた米軍廃棄物によって、「施設への機材等の搬入や搬出を阻止する行為」が威力業務妨害という。

抗議行動抑圧は明らか

 これこそ今国会で成立した重要土地調査規制法を先取りした市民弾圧だ。

 沖縄弁護士会の加藤裕弁護士は「宮城さんの行動は『威力』とは言い難く、保護されるべき政治的表現の自由の一つ。県警の捜査は過剰で、政府に反対するような運動を抑制しようとする行為だと言わざるを得ない」と指摘した。

 6月7日、国会内で重要土地調査規制法廃案を求める地方議員らによる集会が開催された。宮城さん家宅捜索の例をとりあげ「この法案が通れば威力業務妨害よりも(捜査が)かなりやりやすくなるはずだ」と馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士は述べた。宮城さんも「世界自然遺産登録を控える中、動物たちが米軍から受けている廃棄物や騒音の被害を政府は明るみに出したくないのだろう。私の抗議行動を制限しようとしたのではないか」と地元メディアに語った。同法によって、基地は「聖域」になってしまう。稀代の悪法、重要土地調査規制法の発動を許さず、廃止しなければならない。

事故のSNS発信も嫌悪

 またしても米軍普天間基地所属のヘリが事故を起こした。6月2日深夜、うるま市の東海岸・津堅島(つけんじま)の畑に不時着した。この5年間で所属機の事故やトラブルは32回。墜落、不時着、緊急着陸、落下物事故など隔月で発生している。日米韓合同軍事演習などで在沖基地と米揚陸艦との行き来の激化による整備不良の可能性が高いと指摘されている。

 宮城さんは、家宅捜索の前日に現場の津堅島に駆けつけていた。事故を起こした米軍ヘリ機体の部隊マークが神社の鳥居に銃の照準を合わせるデザインだったことをSNSで発信。「日本を守る」たてまえの米軍がターゲットにしているのが「日本の神社」であったことも暴露した宮城さん。

 重要土地調査規制法は、不都合な真実を暴く市民を弾圧する現代版治安維持法≠ノ他ならない。(N)



MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS