2021年06月25日 1679号

【ZENKO中央要請行動 反原発交渉 避難者追い出し 財務省の責任ただす 汚染水放出、再稼働を追及】

 原発を巡る問題は山積している。避難者救済、汚染水放出、老朽原発再稼働といった当面の課題に絞った要請行動が6月11日に行われた。ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)中央要請行動の一環としてもたれ、約30人が各省庁に迫った。

 財務省には昨年11月4日に続き、国家公務員宿舎に住む区域外避難者の住宅追い出しについて中止するよう要請した。行き場のない避難者の実態、人権侵害に当たる福島県の実家訪問、住宅確保に向けた福島県の対応などについて約1時間、意見交換を行った。

通知・提訴の意向はない

 県の4世帯明け渡し提訴については、現在のところ所有者の財務省として、4世帯を含む避難者への明け渡しの通知や提訴を行う意向がないことを明らかにした。参加した避難当事者は「家主が出ろと訴えていないのに、関係のない福島県が出ろというのは裁判でも問題にしていく」と語った。

 2019年3月の国家公務員宿舎継続入居(有償)契約解除の際、「事情のある世帯」の取り扱いは県と国で協議されることとなっていたが、生活保護受給世帯だけで、他の経済的困窮者・精神疾患で定職につけない者らは外された。国が「(県は)きめ細かく把握してきたと承知しています」といった認識のため、その誤りを指摘すると「福島県が、生活保護だけを“事情のある世帯”として挙げた」という事実を明らかにした。事情のある世帯の調査について当時、国は独自にやらずに福島県任せにしてきた。今後、継続入居希望者の声が反映される場を持つよう要望し、「検討する」との答えが返ってきていた。

 福島県は昨年、退去と明け渡し提訴を示唆する通知文を避難者に送り付け、実家を勝手に調べて訪問し親族に退去と損害賠償金支払いへの協力を催促して回った。「このような人権侵害を見逃すのか」と訴えたところ、財務省は、通知発送の事実は県からの事後報告で、実家訪問の事実はニュース等メディアで知ったことを明らかにした。当事者の手紙によると県は「損害賠償金がたまっている。払ってくれないと私たちが給料をもらえない」「引っ越さないのはわがままだ」「月7万円くらいで借りられるだろう」などと脅している。財務省は「今日話されたことに関して、福島県に調査してみる」と返事した。

 住宅の確保では、国は「福島県は住まいの確保等に適切に対応している」と評価しているため、その誤りを指摘。福島県が紹介するのは、入居条件が困難、民間家賃相場同様の物件ばかりで、役には立っていない。「避難者の住宅追い出しを許さない会」代表で自らも避難者の熊本美彌子さんは「県が紹介した物件を見に行くとゴミ屋敷だった。低額家賃なら支払う意思はあるが単身者は都営住宅への入居資格がない、応募しても当選しない。避難者向けの公的住宅を確保してもらいたい」と訴えた。

 最後に、「今日の話を受け県に聞いてみる。その後の対応は、すべてに応えられないかもしれないが、報告はする」と約束した。

避難対策の重要性認める

 資源エネルギー庁に対しては、福島第1原発の汚染水海洋放出方針撤回を求めた。漁業関係団体の反対表明、周辺自治体の反対・慎重決議は無視できず、「放出まで2年はあるので、理解を求める努力をしていく」とは答えたものの、国の言う努力と理解は、ゼロベースからの立場ではなく、あくまで放出を実施するためのアリバイ作りでしかないことが明らかになった。

 国の説得とは、タンクが廃炉作業に支障をきたす、「風評被害対策」として損害賠償金を検討する、という内容だ。担当者は「放出の前に基準以下にするのが役目」としか言わない。 今後、エネ庁による漁協や自治体への「説明」の際、実害と保管の対案を議題にさせていく必要性が浮き彫りとなった。

 原子力規制庁原子力規制部には、40年超えの老朽原発廃炉を求めた。ZENKO関電前プロジェクトは、昨年12月の大阪地裁判決を活用し、「1000ガル以上の地震が20年間で17回起きている。原発に高い耐震性はない」と不安を訴えた。避難計画もないままの再稼働について、「避難対策は重要。実効性のない避難計画で原発動かすな、という主張はわかるので、上部に伝えます」と答えた。

 政府のCO2削減、火力発電から原発再稼働への方針の下では、再生可能エネルギー転換方針、30年までの構成比目標5割以上(政府は30%)など、脱原発・再エネ転換の議論と合わせて行う必要性が増してきた。

 
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