2021年07月02日 1680号

【新型コロナワクチン/学校での集団接種を画策/子どもたちには有害無益】

 菅政権の新型コロナ対策は、緊急事態宣言とワクチン接種のみと言っていい。それだけを頼りにオリンピック開催強行から衆院選へなだれ込もうとしている。そのワクチン接種が子どもたちにリスクを背負わせている。

 菅政権は、新型コロナワクチンの有効性・安全性を慎重に検証することも、ワクチン以外の医療対策を検討することもなく接種数稼ぎ≠ノ血道をあげている。

 「1日あたり100万回接種」と大風呂敷を広げ、総務省官僚を使って自治体の尻を叩き、医療者を駆りだし、自衛隊を動員して大規模接種会場まで設置した。大規模接種会場の予約がスカスカになると対象地域・年齢を拡大し、学校での集団接種にも踏み込もうとしている。

発症少なく死亡ゼロ

 学校での集団接種の動きがある20歳未満について新型コロナウイルス感染症の状況を見てみる。

 厚生労働省(6/16)によれば新型コロナウイルス感染者累計75万9726人(年齢不明者を除く)のうち10歳未満2万5850人(3・4%)、10歳代5万7451人(7・56%)で、20歳未満は合計8万3301人(10・96%)だ。死亡者は1万1609人(年齢不明者を除く)中、ゼロだ。

 また別の調査では20歳未満の感染者のうち無症状が約半数。感染者の85%超が治療なしで回復している。ICU(集中治療室)での治療が必要な症状はきわめてまれで、治療にしても7割が解熱剤中心だ。


害作用は確実に出現

 ワクチン接種について一般的に語られるのは「リスクとベネフィット」。害作用と利益を比較し、利益が害作用を上回れば接種をするという考え方だ。では、20歳未満の子どもたちにとって、どちらが上回るのか。

 まず、利益について。

 ファイザー製、モデルナ製の両ワクチンともに、現在明らかであるとされているのは、発症予防効果と重篤化予防効果のみであり、感染予防効果は不明だ。

 新型コロナウイルス感染症では小児患者の割合は少なく、感染した場合も多くが無症状から軽症で経過し、重症化しにくい。死亡リスクは極めて低く、幸い日本では20歳未満で死亡者はゼロだ。

 被接種者個人には、ワクチン接種の利益はほぼない。

 害作用はどうか。

 厚労省副反応調査によると、若年者の方が高齢者より副反応の発生頻度が高い。

 例えば、2回目接種後の37・5℃以上の発熱は、50歳代は約30%、70歳代では約10%に対して、20歳代では約50%。2回目接種後の全身倦怠感は、70歳代では約30%、50歳代70%に対して20歳代では約80%だ。海外の報告でも、発熱、悪寒、倦怠感、頭痛は若年者の方が発生頻度が高い。

 ならば20歳未満なら、害作用の発生頻度は20歳代と同等かもっと高い≠ニ考えるのが妥当だろう。米国では小児を含めて若年男性におけるワクチン接種後の心筋炎の発症が報告されており、ワクチンとの関連性が調査されている。日本小児科学会も「小児では副反応頻度が比較的高い」と認めている。

 子どもへのワクチン接種は、被接種者個人への利益は極めて少なく、害作用は確実に出現する。接種は進めるべきではない。

 子どもへの感染経路の約80%が家庭内感染、1割が学校などでの大人からの感染だ。まず社会に広がり、家庭に持ち込まれ子どもに感染しているのが実態であり「子どもが感染を広げる」という事実はない。必要なのは「学校での集団接種」ではなく、社会での感染を抑え込む実効性のある対策だ。


小児学会は個別で

 学校での集団接種は、接種した子の副反応だけでなく、しない子への人権侵害のリスクさえももたらす。

 日本小児科学会は、12歳以上の健康な子どもと子どもに接する大人へのワクチン接種を「意義がある」としている。その立場の学会ですら「(接種の)メリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解していること、接種前・中・後におけるきめ細かな対応を行うこと」が接種の前提とし、そこから「個別接種が望ましい」「やむを得ず集団接種を実施する際には、本人と養育者に対する個別の説明をしっかり行う配慮が望まれる」「ワクチン接種を希望しない子どもと養育者に対しては、特別扱いされないような十分な配慮が必要」とする。集団接種での配慮事項は菅政権も同様のことを述べている。

 もっともな話ではあるが、現実はどうか。

副反応に加え人権侵害も

 「メリット、デメリットの十分な理解」と言うが、公立学校ではせいぜいプリント配布される程度。最後は「接種の判断は主治医と相談して」となるのが落ちだ。しかも学校は、政府、文部科学省、地方教育委員会の指示に従うので、説明は「安全・有効。副反応もメリットと比べれば軽微」となるのは目に見えている。

 「特別扱いされないような十分な配慮」も実現性に乏しい。医療ひっ迫に陥った大阪府吉村洋文知事など親菅政権≠フ政治家たちは、「ワクチンは自分を守るとともに、周りの人に感染させない効果がある」と未検証で確立されていない新型コロナワクチンの感染予防効果までメディアで宣伝し接種を煽っている。明らかに政治的・社会的圧力を加えるものだ。

 「周りの人に感染させない」ワクチンを「接種しない」人は、「周りの人を感染させてもよいと考えている人」との決めつけに転化する。これはバッシングの原因となりうる。すでに、医療従事者・施設職員などの職域接種では「職責」などを理由に実質的な接種強要が存在し、非接種者が冷たい目にさらされるといったことが起きている。学校は別、であるはずがない。

市民と無縁の「社会防衛」

 子どもたちにリスクを背負わせるのと引き換えに、得られる「社会的ベネフィット」は何か。

 一般的にワクチンのベネフィットとして語られるのが「集団免疫」。これは「集団の中の多くの人が感染症への免疫を持てば感染拡大抑制効果が期待でき、結果として社会全体が守られる(社会防衛)」というもの。菅も「集団免疫の体制にどんどん近づいていく」と記者会見で述べている。だが「新型コロナワクチンの集団免疫効果は不明」というのが厚労省の公式見解で、菅の記者会見は全く根拠のないでたらめ。

 子どもへのワクチン接種は、被接種者個人には有害無益であり「社会防衛」の名の下に子どもに犠牲を強いるものだ。

 「学校での集団接種」で菅政権が手にしたいのは、「全国民接種で集団免疫を得た」という印象をふりまき、GoToトラベルやオリンピック開催強行への批判をかわすことだ。政治の都合で子どもたちにリスクを負わすことはできない。

(6月22日、文科省は現時点では個別接種を基本とする旨、各自治体に通知した)
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