2021年07月02日 1680号

【ミリタリーウォッチング 弾圧への重要土地規制法 違憲立法は廃止しかない】

 6月16日、政府・与党は日本維新の会、国民民主党とともに「重要土地調査規制法」の制定を強行した。

 同法は安倍前政権が昨年7月「骨太の方針」で打ち出したのを菅政権が引き継いだもので、狙いは政府答弁で明らかなように「安全保障上(軍事上)重要な施設や国境に関係する離島の機能を妨害する行為を防止する」ところにある。

 分かりやすく言えば、政府が「仮想敵国」と想定する中国との軍事的衝突を米軍・自衛隊・海上保安庁が守備よくやり遂げるために、今のうちに市民が軍事基地や施設に反対してとる行動を監視し、威嚇し、弱体化しておくことを目的とした「法律」と言える。

 しかし、まさか市民に向かって「戦争のための準備です」と言うわけにはいかない。同法制定に当たって、政府は「外国人の土地取得問題」という「理由」を出してきた。これを「立法事実」にしようとしたわけだが、実際には外国人の土地取得によって基地機能が阻害された事実など存在しなかった。何も今回のような仰々しい法律をつくる必要はない。にもかかわらず、2年以下の懲役や200万円以下の罰金まで科せられる重い罰則つきの法律をなぜ作らなければならなかったのか。ここにこの法律の本当の狙いがある。

 法案は、対象者の何を調べるのか、どんなことが勧告命令されるのか、何をすれば犯罪に問われるのか、すべて闇に包まれていたが、審議の中でターゲットが市民である正体が見えてきた。本来、条文に明記すべき事柄を鮮明にせず、「政令」に委任する。また、勧告・命令の内容である「その他必要な措置をとるべき旨」がどのような行為を指すのかは、総理大臣の判断に委ねられている。このように刑罰を構成する要件規定が法律に明示されないということは、刑事法の基本原則すら満たしておらず、憲法31条、自由権規約9条にも違反する。こんな法律は破棄するしかない。

北谷町が廃止意見書

 わずかの審議期間でも、沖縄、全国で反基地運動を闘う市民、地方自治体議員から反対の声が上がり、日弁連や地方メディアも批判。廃案を求める運動とともに、参院採決時には「#重要土地規制法案を廃案に」のツイッターデモが15万件を超えた。市民の闘いに押され、当初はいっそう悪法となる修正案を決定していた立憲民主党も抵抗し反対した。

 違憲の土地規制法は成立したが、監視対象地域や内容を決める基本方針、政令を許さず、廃止を求めなければならない。嘉手納基地のある沖縄県北谷(ちゃたん)町議会は6月18日、法律廃止を求める意見書を決議した。地域からの闘いはこれからだ。

 藤田なぎ
 平和と生活をむすぶ会

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS