2021年07月09日 1681号

【沖縄恨之碑建立15周年 改めて加害を問う 遺骨眠る土砂使うな 再びハンスト】

 新型コロナ感染が全国でもきわめて深刻な沖縄。6月19日、NPO法人沖縄恨(ハン)之碑の会が、建立15周年目の追悼会を読谷村(よみたんそん)・瀬名波(せなは)の丘で開催した。

 恨之碑とは、沖縄戦の渦中、朝鮮半島から軍夫として強制動員された若者たちが日本軍の過酷な労務荷役に就かされ多くが犠牲者となったことを悼む碑として2006年5月、市民の募金で建立されたもの。

 会は、理事で僧侶の知花一昌さんの読経と祈りに始まり、地元読谷村の音楽ディオ「マサユメ」による琉球横笛とギター演奏、普天間基地ゲート前でゴスペルを歌う会のキリスト者による合唱と続く。安里英子共同代表はあいさつで「5月29日に年次総会と元『慰安婦』ぺ・ポンギさん30年忌シンポジウムを予定していたが、コロナ禍で延期。追悼会だけは屋外ということで開催にこぎつけた。建立から15年の月日の重みを振り返りたい」。野鳥が鳴き、黒い蝶が碑の周りを飛び交う。

政府への怒りと闘い

 理事の平良修牧師は、改めて沖縄からの加害≠ニいう問題をとらえ返した。「元軍夫の姜仁昌(カンインチャン)氏は、ヤマトの日本人と沖縄の日本人を区別していた。沖縄大学での講演のとき、彼はヤマトから来た日本人を立たせ『あなたたちは沖縄に謝罪しましたか』と問うた。しかし姜氏の配慮にもかかわらず、沖縄人は韓国に対しては日本人以外の何者でもない。私たちは『恨之碑』の前で跪(ひざま)づかなければならない者たちなのだということをしっかり心にとめておかねばならない」と自著『私は沖縄の牧師である』の一文を読み上げた。

 同じく理事で恨之碑を製作した彫刻家の金城実さんは「腹が立つ。沖縄戦没者の遺骨の土砂で基地埋め立てをやり、沖縄を狙い撃ちした土地規制法を通し、徴用工裁判や『慰安婦』裁判で日本政府は韓国たたきを繰り返す。愛知トリエンナーレ言論の不自由展にかかわって、河村名古屋市長は知事リコール署名の偽造に関係するなどもう無茶苦茶だ。だから『慰安婦』像を作った。政府がウソでごまかそうが、この恨之碑―日本軍が朝鮮の青年を痛めつけたことは決して消し去ることはできない」。金城さんは新しい「慰安婦」像をこの日持参して紹介し、恨之碑の前に立てかけた。石嶺傳實(いしみねでんじつ)読谷村長からもメッセージが届けられた。

 最後に事務局長の上間芳子さんが「沖縄戦での加害のことも考える追悼会になった。日本政府は辺野古や南西諸島など沖縄戦時のような要塞化を進めている。私たちはこれからも現場で闘っていく」と決意を込めてまとめた。

 参加呼びかけが控えられた中でも、45人が出席。連日、辺野古ゲート前で闘っている人たちも多い。恨之碑を次世代へと継承していく課題に向き合い、恨之碑を維持していくことを参加者は確認した。

不承認を と具志堅さん

 6月23日、沖縄戦の組織的戦闘終結から76年目の「慰霊の日」。沖縄は朝から強い雨が降った。糸満市摩文仁(まぶに)・平和祈念公園での「沖縄全戦没者追悼式」も昨年に続き規模を縮小した。

 19日から再び県庁前でハンガーストライキに突入した沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さんは、21日から平和祈念公園入口近くに移り南部の土砂での辺野古埋め立てをやめるよう訴えた。

 具志堅さんは「今回のハンストの要求はひとつ。玉城デニー知事が辺野古埋め立ての設計変更申請を不承認とすることだけ」ときっぱり。遺骨を含む土砂を辺野古埋め立てに使用する問題では、沖縄県以外でも金沢市議会や大阪府茨木市議会などで意見書が可決され、全国の地方議員248人の政府要請も始まった。軟弱地盤、活断層に続き遺骨問題。辺野古新基地計画は破綻している。一日も早く政府は撤回すべきだ。

(沖縄恨之碑の会・前事務局長 西岡信之)



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