2021年07月16日 1682号

【みるよむ(591) イラク平和テレビ局in Japan 2021年7月3日配信 イラクの工場はなぜ止まっているのか?―国内産業つぶしにNO―】

 イラクには多数の近代的工場があるが、その多くが停止し多数の失業者が出ている。それは、政治家や有力者が利権を優先させ、国内産業の発展を抑え込んでいるからだ。2021年5月、サナテレビは工場現場などを取材してこの問題を明らかにした。

 映像は、生産を停止した多くの大工場を映し出す。イラクはもともと世界的な産油国で重化学工業も中東の中では発達していた。現在もGDP(国内総生産)2300億j(約25兆円)という経済規模を持つ。

 この経済を大混乱に陥れ、産業を破壊し、人びとを苦しめる元凶となったのが2003年のイラク戦争と占領だ。欧米や日本、韓国などのグローバル資本は石油利権を獲得。イラクの権力者たちと結託して国内産業をつぶす一方、工業製品を輸入させ利権を確保してきた。輸入品に対する関税は、中東では普通20%程度だが、イラクでは3%にすぎない。

 太刀打ちできずつぶれる国内産業が続出する。サナテレビによると、イラクの5万4千の事業所のうち実に90%が操業の一時停止に追い込まれている。若者に仕事が回らずに失業者が増えるだけだ。

工場つぶす宗派勢力

 ある工場の経営者はインタビューで答える。「イラクの政治家やイスラム政治勢力の中には、隣の国イランに工場を持っている連中がいて、イラク国内の工場をつぶしにかかる」。工場に宗派の私兵が突入し、「裁判所の逮捕令状もないのに労働者を捕まえました。工場は活動を止めました」と言う。この経営者は150人の労働者を一時解雇せざるを得なくなった。

 これがイラクの現在の社会構造だ。グローバル資本と権力者らがあくどい手口で国内産業を破壊し利権をむさぼっている。サナテレビはこうした実態を暴き、国内産業の育成と雇用の確保を呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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