2021年07月30日 1684号

【みるよむ(593)2021年7月17日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクで進むイスラム教の宗教支配】

 イラクではイスラム教を使った宗教支配が強まっている。キリスト教徒にも飲酒を禁止し、「ラマダーン月」には断食を強制している。2021年5月、ラマダーン月の最中にサナテレビはこの問題を取り上げた。

 イスラム教では、今年は4月13日から5月12日がラマダーン月であった。イスラム教徒は昼間は断食をしなければならないことになっている。イラクでは何十年も前から政教分離が進み、断食などしない人、飲酒をする人もごくふつうに見られていたのだが、近年、とりわけ今年のラマダーン月は、イスラムの教えを守れという厳しい社会的圧力がかけられた。

 サナテレビは、こうした状況について、イスラム教に反すると見なした市民の命を平気で奪うISIS(いわゆる「イスラム国」)支配下の「シリアのラッカのようだ」と批判する。

 特に問題なのは文化観光省が発した公式書簡(指示文書)だ。映像が示す文書にはこうある。「公衆の面前での食事を禁止する」「レストランを開いたりパーティーを主催すること禁じる」「アルコール飲料を販売する店を開くことを禁止する」「上記の指示を破る者はすべて処罰される」。こんな命令を政府機関が出すのは異常だ。

イラク憲法にも反する

 レポーターは「他人を犠牲にして『イスラム教徒の感情』を尊重するものだ」と反対する。イラク憲法が信教の自由を保障し、宗教の違いに基づく差別も許さないと定めていることに反すると批判指摘する。

 政府は新型コロナウイルスの危機の広がりや失業の増加で高まる市民の不満を押さえるためにイスラム教の教義を強制し利用しているのだ。権力者が自らの都合のいいように市民に圧力をかけ自由を奪うのは、日本でも共通するやり口だ。不当なことにはっきりと反対する必要性を改めて実感させる映像だ。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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