2021年08月06日 1685号

【東京五輪/開会式入場行進曲は安倍応援団すぎやまこういち】

 炎上マーケティングが大成功とみるべきなのか―。NHKが生中継した東京オリンピック開会式(7/23)の世帯平均視聴率が56・4%を記録した(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。

 海外メディアに「日本風のコメディ、我々には理解不能」(米ABC)、「日本はIOCの囚人になっている」(仏紙ルモンド)と酷評されようが、視聴率は高ければ勝ち。NHKの「菅首相礼賛」に拍車がかかりそうな、嫌な気がする。

 もちろん、「高視聴率イコール東京五輪支持」ではない。ネット掲示板に「事件なら見るんだよ 今回のオリンピック強行開催は事件だからな」という書き込みがあったが、同感だ。筆者も職務上、最後まで観てしまった(観ずに批判はできないからね)。

 さて、選手入場の行進曲について、NHKの中継アナウンサーは「日本が誇るゲーム音楽」と実況していたが、とんでもない話である。ゲーム音楽が駄目なのではない。作者が問題なのだ。冒頭に鳴り響いた『ドラゴンクエスト』テーマ曲の作曲者、すぎやまこういちのことである。

 すぎやまは数々のヒット曲を手掛けた有名作曲家だが、改憲推進団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の代表発起人という極右文化人の顔を持つ。「安倍総理を求める民間人有志の会」の発起人を務めた安倍応援団でもある。

 しかも、右派の広告塔として、数々の歴史歪曲策動やヘイトスピーチを支援してきた。たとえば、日本軍「慰安婦」は強制ではないと主張する意見広告に名を連ねた。河村たかし名古屋市長の「南京大虐殺はなかった」発言を支持する意見広告の呼びかけ人になったこともある。

 さらに、ユーチューブ番組で自民党の杉田水脈議員と共演(2015年6月)。「生産性がない同性愛の人たちを税金を使って支援する大義名分はない」と述べた杉田の発言を、「正論です」と全面肯定した。東京五輪の大会理念である「多様性と調和」を真っ向から否定する人物なのだ。

 このように、すぎやまは現役の極右レイシストである。演出担当の小林賢太郎を解任(8面参照)するのなら、すぎやまの曲も使うべきではなかった。お笑い芸人出身の劇作家の首は簡単に切っても、安倍前首相のおともだちは全力で守るということか。東京五輪はやはり改憲勢力が私物化する大会だった。  (M)
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