2021年08月13・20日 1686号

【18の政策とは/韓国大法院判決の意義/<第4回>戦後補償 「過去清算」と植民地主義の克服(4)】

 戦後補償問題で近年進展をみせたのは、強制動員被害者への補償を命じた韓国大法院(最高裁)判決だ。

 2018年10月韓国大法院は、被害者の訴えは「日本政府の韓半島に対する不法的な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結された大企業の反人道的な不法行為を前提にする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権」の行使であり、日韓両政府が戦後処理として締結した「請求権協定」の適用外とした。その上で、被告日本製鉄(現新日鐵住金)と三菱重工に対して損害賠償を命じ、「請求権協定で強制動員慰謝料請求権について明確に定めなかった責任を被害者に転嫁してはならない」と日韓両政府の責任に言及し断罪した。

 しかし、安倍前政権・菅政権は「国際法上あり得ない」「請求権協定で完全かつ最終的に解決」と判決を拒否し、「徴用ではない」と通常の雇用契約であったかのように事実を捻じ曲げ原告を愚弄(ぐろう)している。

 だが、政府間の協定が個人の損害賠償請求権まで消滅させるものでないことは、90年代から続いた日本軍性奴隷や強制連行・強制労働などの戦後補償運動が明らかにしてきた国際法上の常識である。日本政府自身、日本人の「原爆訴訟」「シベリア抑留訴訟」以降「個人請求権は消滅していない」としており、完全な二枚舌だ。しかも、司法の判断を尊重するとした文在寅(ムンジェイン)政権を非難し、三権分立すら否定してきた。

今に続く植民地主義

 日本政府は、日韓請求権協定(1965年)による5億ドル援助を、「賠償ではなく独立祝い金」と説明してきた(65年11月19日参院本会議・椎名悦三郎外相)。また政府見解として日韓請求権協定は「個人の財産・請求権そのものを消滅させたものではない」と明言している(91年12月30日参院予算委・柳井俊二条約局長)。安倍・菅らの主張は、歴史的事実も政府見解も無視したものだ。

 大法院判決の被告であった日本製鉄は1934年に設立された国策会社。侵略戦争を支えるためにのべ1万人に及ぶと言われる労働者を強制連行した戦犯企業≠フ代表格だ。過去、幾度も強制連行責任を追及されてきた。植民地支配と資本の利益は常に一体だ。請求権協定も韓国への日本の経済侵略の足掛かりであり、ODA(政府開発援助)と同じ構造の経済力による形を変えた植民地主義だ。

 深刻な人権侵害が続出している外国人技能実習生問題や介護職への外国人労働者投入の問題も、現代版植民地主義の表れだ。途上国との経済格差を利用し、安価な労働力として外国人を動員している。強制連行・強制労働問題の解決は、現代につながる植民地主義克服の課題でもある。

    《続く》
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