2021年08月13・20日 1686号

【奥間政則さん(沖縄ドローンプロジェクト)に聞く/辺野古、南西諸島の軍事要塞化進める政府/市民の目≠ニ声≠奪う法規制と闘う】

 沖縄県玉城デニー知事は8月中にも辺野古新基地建設工事の設計変更を「不承認」とする。建設予定地の軟弱地盤が発覚し、当初設計では完成できない。不承認で工事はとん挫する。だが、政府は黙って見てはいない。土木技術者として建設工事の問題点を指摘する沖縄ドローンプロジェクトの奥間政則さんに現在の状況を聞いた(7月26日、まとめは編集部。奥間さんは第51回平和と民主主義をめざす全国交歓会―2021ZENKOin大阪に参加するため来阪した)

設計変更不承認へ

 沖縄は新型コロナ感染者数が人口比でみると東京以上。全国ワースト1。玉城デニー知事の「不承認」は緊急事態宣言解除後ではないかと見られています。

 「変更不承認」となれば、国は訴訟に持ち込み、結果として「承認」が得られるまで、新たな工事はできなくなるでしょう。

 政府は、裁判で勝ったらすぐに工事再開できるよう指示しているはずです。施工業者は、工法変更によって新たに必要となる資機材の手配などをしておかねばなりません。新たに追加を予定しているサンドコンパクション杭の打設には、杭にする砂だけでなく汚濁を抑えるために海底の軟弱層表面に敷く大量の砂や90bにおよぶ杭打設機械が必要となりますが、判決の前に表立って動くことはできないはずです。

 本来の公共事業なら工期や施工計画・品質管理など厳格な管理が求められるのですが、この基地建設は全く杜撰(ずさん)で公共工事の体をなしていません。会計検査院も検査しないので、2・5兆円(県試算)もの税金を使って、やりたい放題です。

 仮に変更設計通りに工事ができたとしても、震度1で護岸は崩壊(立石雅昭新潟大学名誉教授らの調査団が解析)。まして海底の軟弱地盤は傾斜しています。その上に盛土(もりど)をすればどうなるか。熱海で大変な被害を出した土石流と同じことが起きると容易に想定されます。海中では、一層流動しやすくなります。誰が見ても危険な工事です。防衛省は、少なくともこうした指摘に応える必要があるはずです。

根拠なく「飛ばすな」

 政府は一方で反対運動を押しつぶそうと規制法をつくってきました。「ドローン規制法」は市民の目≠奪うもの。工事現場からにごり水≠ェ流出している決定的な証拠写真は防衛省にはよほど痛かったと思います。「工事は適正に行っている」とは言えなくなってしまったからです。

 馬毛島(まげしま)・奄美大島から南西諸島の島々で進行する軍事要塞化の動きも、ドローン撮影ではじめてその実態を明らかにすることができました。

 奄美にはすでに陸・海・空、各自衛隊の基地があります。ドローン撮影禁止の警告看板も掲示していますが、規制対象施設にはなっていません。ドローンを飛ばすとすぐに自衛官がやってきます。「飛ばしちゃいけません」と。何に基づいているのか、聞き返すと何も答えられません。

 馬毛島は9割以上、防衛省による買収が済んでいます。地元の漁民は辺野古以上の日当で、防衛省職員や作業員のチャーター船として雇われています。米軍の空母艦載機離着陸訓練場と陸上自衛隊基地の計画がありますが、開発業者が所有していた時に荒造成も行われており、建設の進捗は速そうです。

「機能阻害行為」と弾圧

 市民の声≠奪うものが「土地規制法」です。

 法律の正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の調査及び利用の規制等に関する法律」。「重要施設周辺」とあるように、軍事基地ばかりでなく原子力発電所なども対象となりますし、「土地規制」といいながら「機能を阻害する行為」を罰することを定めています。懲役2年以下、罰金200万円以下の刑事罰までついています。基地や原発への反対行動が「機能阻害行為」とされる恐れもあり、反対運動を萎縮させる狙いがあります。

 沖縄ドローンプロジェクト対策弁護団の仲松正人弁護士が、こんな例をあげています。普天間飛行場からの飛行ルートや騒音を体験・調査しようと、基地近くの友人アパートで記録をとり、新聞社に情報を提供したら、国から友人に対し転居の強要があった―。これはあくまでたとえ話ですが、現実に起こりうる法律なのです。

 この法律の危険性は沖縄の中でもあまり広がっていません。実際どの範囲が規制対象になるのか。想定地図をつくってみました。普天間飛行場の周辺を見て下さい。基地からおおむね1`bの範囲を見ると、宜野湾市はほぼ全域が入ります。規制区域外でも制限を受けるかもしれません。辺野古新基地建設工事に反対する行為は機能阻害行為とされ、辺野古から15`b以上も離れた塩川港や安和(あわ)桟橋での阻止行動も規制されかねません。

 法は成立しても、施行はまだ先です。世論を喚起して、この危険な法律を廃止しなければなりません。

(クリックで拡大)

遺骨混じり土砂規制を

 実態を知り声をあげることは、政府の暴走を阻止する力になります。その一つ、遺骨混じりの土砂を埋め立てに使わせない「土砂条例」制定の動きがあります。

 防衛省は、辺野古埋め立て用の土砂を島尻(沖縄島南部)から調達する計画を示しました。県内調達分4476万立方bの7割も南部地域から採取します。島尻は広範囲にわたり、沖縄戦跡国定公園に指定されているのですが、大半は普通地域で「鉱物・土石の採取」は届出すれば可能です。

 地域の市民団体「島ぐるみ会議」の依頼でドローンを飛ばしました。自然景観の保護が目的の自然公園法の地域ながら、地上からでは見えない採取地の無残な掘削状況が分かりました。しかも沖縄戦犠牲者の遺骨収集さえ終わっていないところです。

 こうした事実を広く知らせたいと、ブックレット『ドローンの眼2 琉球弧戦争と平和の最前線』の出版を準備しています。

 今市民は、遺骨混じり土砂の埋め立て転用を規制する「土砂条例」の制定にむけ学習会に取り組んでいます。土砂採取を規制すれば開発業者に損害を与え、補償問題も出てきます。それでも規制しなければなりません。なぜ南部地域で規制するのか、と問われれば沖縄戦を学び直すことも必要になってきます。県議会では自民党・公明党も含め遺骨混じり土砂を辺野古の埋め立てに使うことに反対しています。きっと制定できると思います。

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 ZENKOに初めて参加して、教育、介護や労働と幅広い分野で闘っていることを知りました。そんな中でDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)とともに辺野古を止めるZHAP(ZENKO辺野古プロジェクト)の取り組みは、国際的な広がりをもつものとして大いに期待しています。

 ひどい政府の政策を転換させていくために、わかりやすい資料を示すことが重要です。今後もドローン撮影を続けます。市民の監視の目と抗議の声を奪われないように頑張りましょう。

  
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