2021年08月27日 1687号

【DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)大会報告/9万5千人に急成長 8日間 熱い討議続く/新たな明日のための社会主義≠゚ざして】

 「先人の残り火から―新たな明日のための社会主義(From the Ashes of the Old: Socialism for a New Tomorrow)」のスローガンのもと、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)の隔年全国大会が8月1〜8日、開催された。海外オブザーバー資格で招待されたZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は、ZHAP(ZENKO辺野古プロジェクト)のビデオメッセージを送り、代表して私が参加した。(ZENKO・日南田成志)

総勢1300人がリモートで参加

 新型コロナ感染症拡大のため、今大会は当初からオンライン開催とされ、大会企画委員会によって周到な準備がなされてきた。その結果、全米から代議員、大会役員、海外ゲスト、スタッフ等総勢約1300人が参加する戦後米国史の中で、社会主義者の結集としては最大の大会となった。内容的には、対面で行われた2年前のアトランタ大会とほぼ同様、あるいはそれをしのぐ充実ぶりであった。

 前回大会の時点で約6万人だったDSAの組織員は、9万5千人となり、支部の数も150から250へと増えすべての州を網羅するに至っている。全国政治委員会(NPC)の運営委員長を務めたジェン・マッキニーさん自身も、大会への全国政治委員会報告の中で「組織のこの急成長ぶりに驚いている」と述べたほどだ。組織拡大の勢いはまだまだ衰えを知らず、“100K突破キャンペーン”(Kは千の単位)が組織方針として共有されるなど、10万人の組織が目前となっている。その実勢に応じて、前回大会では組織員50人に1人の大会代議員選出であったが、今回は70人に1人の割合となっていた。

 大会には、決議案とそれへの修正案が52本、DSA規約・細則の変更案とそれへの修正案が11本、全国政治委員会からの提案とそれへの修正案、さらにDSA政治綱領案等が提出された。

 決議案の提出には正会員100人の賛同が、規約細則の変更案には250人の賛同が必要とされている。提出期限が今年4月段階に設定されており、事前に全支部での討議及び修正案の提出が保障された。

 討論に付された数多くの議案は、全国政治委員ナタリー・ミディリさんの議事進行で厳密な手続きで討論され、1件1件オンライン投票での採決が進められた。賛成・反対討論への参加者はZoomの挙手機能で発言を求め、議長が指名すると即座にテック・チーム(Zoom担当スタッフ)が発言者を画面に写し出して発言させるなど、前アトランタ大会の対面での場合と全く同じ大会風景が、1300人が参加するバーチャルな空間で展開された。

コロナ危機とBLM市民蜂起を闘う

 全国政治委員会報告では、前大会で選出された18人の全国政治委員にとってこの2年間の任期で最大のチャレンジが2つあったことが触れられた。

 一つは、昨年、コロナ感染症の爆発的流行という危機的事態が始まり、それによって影響を受ける組織員や各支部の活動に迅速に対応することが問われたことだ。コロナ対策委員会を即刻立ち上げ、全支部にZoomへのアクセスを保障し、また支部間での相互支援活動を援助する全国的なネットワークを整備した。

 もう一つは、昨夏、ミネソタ州ミネアポリス市でジョージ・フロイドさんが警察によって殺害されたことをきっかけとした全国的な市民蜂起(BLM)への対応だ。多くのDSA支部が連日の街頭行動に雪崩(なだれ)を打って参加していった。その過程で、現在進行形で生起する様々な課題に迅速に現場対応する“レッドラビット隊”を組織し体制をとった。また、黒人の尊厳が守られ自由に息ができる社会≠めざし、警察監獄体制の廃止を求めてより重い責任を果たしていくために、廃止作業部会を立ち上げた。現在もこの部会は素晴らしい仕事をしていると報告された。

パレスチナと労働者階級の解放は同じ

 8日間にわたる大会期間中、平日は午後7時から深夜にかけて、週末は午前10時から終日、多くの決議案の討議、採択が行われた。決議案討論の時間帯を挟むように、様々なテーマで分科会のパネルディスカッションや連帯スピーチのセッションが持たれた。

 印象に残った一端を報告したい。

 まず今回の大会では、DSAの現役連邦議会下院議員及び新たな市長就任予定者からの連帯スピーチが参加者に深い感動を与えた。

 大会初日の開会集会では、DSAがミシガン州第13選挙区(デトロイト市)から下院議員に送り出したラシーダ・トレイブがあいさつした。米国初の女性パレスチナ系アメリカ人議員であることを堂々と主張するトレイブは、ヨルダン川西岸で迫害を受け続けている自らの家族と、自分の選挙区であるデトロイト市で冬場水道料金が払えず雪をバケツに詰めそれを溶かしてトイレの水洗に使っている老夫婦に言及。両者が、同じ資本主義という命より金を優先するシステムの下で苦しんでいることを強調した。そして、「コロナ感染の爆発がこの資本主義の本質を誰の目にも明らかにした。パレスチナ解放の闘いと米国の労働者階級解放の闘いは同じ資本主義の抑圧構造に対する闘いであり、ともにその闘いを担おう」と熱く語った。

 彼女は、DSAがこの間多くの選挙闘争で勝利をおさめ多くの各級議員を生み出していることを大きな成果としつつも、「常に議員は現場のDSAの一員として、その大衆的な運動と一体になってこそ議会内で力を発揮できる。そのためにも今後一人でも多くの現場活動家が選挙にチャレンジしよう」と促した。

差別と貧困の闘いから市長候補へ

 大会5日目のパネルでは、今年6月にニューヨーク州バッファロー市の民主党市長予備選挙で勝利したDSAメンバーであるインディア・ウォルトンが発言した。

 ウォルトンは、マスコミですい星のごとく出現した≠ニ言われていることについて反論。自らの生い立ちを語ることで、差別と貧困との闘いの必然として市長選立候補に至った経過を説明した。14歳でシングルマザーになって高校中退を余儀なくされた後、自力で高卒認定資格を取る。19歳の時に双子を妊娠24週で早産し、医療制度自体からありとあらゆる差別的な扱いを受けて心に深い傷を負った。その自らの経験から、看護師になって闘うことを決意したのだ。

 敗北した民主党右派の現役市長は、社会主義者の市長誕生について恐怖を煽り、いまだに選挙の正当性に疑問を投げかける攻撃を続けている。これに対し、「しかし、真の恐怖とは、その瞬間に決定的に必要な医療が受けられないこと▽その日の食料がないこと▽家賃が払えず家を追い出されること▽いつ解雇されるかわからない上司の下で働くこと▽まともな感染症対策がなされない中で生活すること▽警察の暴力と投獄の脅しに怯えて暮らさなければならないこと―ではないのか。こんな社会こそ共に変えていこう」と力強く語った。 《続く》



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