2021年09月03日 1688号

【MDS18の政策とは/あらゆる人権侵害を無くす/第4回戦後補償 「過去清算」と植民地主義の克服(5)】

 旧日本軍韓国人軍人・軍属とその遺族は、日本政府に対して遺骨・未払い金返還、謝罪広告の掲載などを求めて2001年、提訴した(グングン裁判)。11年、最高裁で棄却されたが、靖国合祀(ごうし)については「ノー・ハプサ(NO!合祀)」裁判として継続されている。

 靖国神社は「宗教施設」の形をした戦争動員装置だ。その施設に、朝鮮を侵略した戦犯とともに犠牲者である韓国人軍人・軍属も「英霊」とされ祀(まつ)られている。原告イ・ヒジャさんは「生きている間も日帝によって支配され、死んでからもなお支配されている。民族に対する冒涜(ぼうとく)だ」と述べる。

 侵略戦争被害者の怒りを共有し、加害責任を自らのものとし強制労働問題とともに政府に解決を押し付けていかねばならない。

 アイヌモシリ(アイヌ人の住むところ)、琉球・奄美諸島で、北海道大学や京都大学など全国12大学が「研究」の名の下に先住民族の墓を暴き遺骨を持ち出した。アイヌ人遺骨については不十分ながらも返還の道筋がつけられたが、琉球・奄美諸島の遺骨は一部「琉球遺骨返還請求訴訟」が闘われている。日本の近代化と深くかかわる植民地主義の始まりを裁くものだ。

朝鮮学校の無償化排除

 2010年4月、民主党政権下で始まった高等学校実質無償化では、当初朝鮮学校も対象となっていたが、安倍前政権の下で対象から除外された。大阪維新の会・橋下徹府知事(当時)はその急先鋒を務めた。

 東京、愛知、大阪、広島、九州で適用を求める裁判が提訴されたが、大阪地裁一審判決を除いてすべて請求棄却。大阪訴訟も、原告が高裁で逆転敗訴し最高裁で上告棄却された。幼保無償化からも外国人学校は法的に排除されている。

 このような措置は民族教育の補償や人種差別を禁じた国際法(国際人権規約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約など)に反する。

 国際法の実施状況を監督する国連の社会権規約委員会、人種差別撤廃委員会、人権委員会等は、日本政府に対し「高校無償化制度から朝鮮学校のみを除外していることは差別であり、制度を朝鮮学校にも適用すること」と再三勧告している。

 強制労働問題で韓国政府を「国際法に反する」と非難する一方で、自らは国際法に違反し、国際法を無視し続けている。根深い植民地主義、排外主義を正当化するためのものだ。

 武力・経済による侵略・支配の政策は、他者を見下す植民地主義、排外主義の社会的土壌の上にある。

 アジア民衆への過去清算を実現し、在日韓国・朝鮮人を含む世界の人びととの連帯と協調を深めることは、グローバル資本主義と闘う上で必須の課題である。

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