2021年09月17日 1690号

【18の政策とは/犠牲は市民・医療労働者/〈第5回〉医療制度改革/医療を商品にせず公共にとり戻す(1)】

 新型コロナ感染症患者の国内発生から1年8か月。安倍・菅政権は、基本的な対感染症政策には目もくれず、緊急事態宣言や安全性未検証のワクチン接種一辺倒の「対策」と、大企業の利益確保を保証する「GoToトラベル」「オリンピック開催強行」という「経済政策」にのみ注力してきた。「第5波」の感染爆発は、グローバル資本の利益のみを追求する新自由主義政策の当然の帰結だ。

 「コロナ禍」が明らかにした医療制度改革の方向性を明らかにする。

医療資材も確保できず

 新型コロナ感染症パンデミック(世界的な流行)は日本の公衆衛生と医療供給体制の脆(もろ)さを浮き彫りにした。

 安倍・菅政権下での新型コロナ感染症対策は、市民・医療労働者に痛みのみを強いるものだった。

 当初クローズアップされたのは、必要な検査もできず、感染症病棟や医療現場の装備すら確保できないという混乱だった。医療現場の必需品である使い捨てマスクは1人週1枚しか支給されず、使いまわし。使い捨ての感染防護衣は全く足りず、ゴミ袋で手作りといった事態にまで陥った。十分な感染防護ができなくなった医療従事者は、帰宅することによる家族への感染を恐れ、ホテルからの通勤や車中泊まで強いられた。

 使い捨てマスクや感染防護衣は、賃金が安い東南アジアからの輸入がほぼ100%を占める。パンデミックを機に国際的な争奪戦となり、製造が間に合わず価格が吊り上がり、一般向けには粗悪品も出回った。グローバル資本主義の一側面があらわになった。

 その後、患者数が増加し感染症法が定める「入院隔離」ができなくなり、2020年10月の閣議決定では「高齢者」「重症者」に限定した。この措置で、国・自治体は、感染防止のための隔離・保護に必要な病床確保の義務を回避する一方、感染爆発に伴う在宅療養者からの家庭内感染者増、重症化対応の遅れ、在宅死など犠牲者増を引き起こした。

 緊急事態宣言は、飲食店「敵視」をあおるのみで、感染拡大を防止しなかった。市民への経済的支援は、1度の10万円支給のみ。まともな休業補償はなくコロナ失業、コロナ廃業≠ェ生活困窮者を急増させた。

 突然の全国学校休校措置は、子どもの教育を受ける権利と同時に、在宅せざるを得なくなった保護者の労働権も奪った。

 接触確認アプリ「COCOA」は、不具合が露呈し政権が宣伝していた機能すら発揮しなかった。世界的科学誌や医学誌でも効果への疑問、信頼性の欠如を指摘されている。IT頼みの他の「対策」も含め巨大企業の利潤を保証しただけだ。

 次回は、このような事態を引き起こした公衆衛生行政の脆弱化(ぜいじゃくか)に焦点をあてる。

(続く)
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