2021年09月17日 1690号

【新型コロナワクチン/副反応の評価体制も放棄/厚労省審議会議事録から(下)】

 「医薬品等行政評価・監視委員会」では、新型コロナワクチン副反応の評価体制が全くなっていないことも明らかになっている。

 監視委では、リスク(害)/ベネフィット(利益)比の評価体制にもテーマは及んだ。新型コロナワクチンの副反応はPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)が「専門家」に諮り評価している。評価方法は、医療機関などが報告した死因とワクチン接種の因果関係を1例1例見ていくというものであり、99・5%が評価不能≠セ。

 第3回委員会(3/15)で佐藤嗣道(さとうつぐみち)委員長代理は、ワクチンの副反応について「ワクチン接種に伴う死亡の発生リスクをどのように評価するのかが重要。(死亡例を)1例1例見ていっても分からない。死亡例に関して比較の群を設けた調査をしない限り因果関係を評価できない」と述べた。厚労省の回答は「なかなか難しい」。

 第4回委員会(6/28)では、佐藤委員の「100万人接種あたり死亡例16・2人との厚労省推計はリスクとベネフィットに照らして許容し得るのか」との問いに対し、厚労省は「ワクチン接種後死亡者にワクチンと関係のない『偶発的死亡者』が紛れ込んでいる可能性があるため、なかなか難しい」と回答した。

 佐藤委員は追及。「個別の因果関係を問わない接種者と被接種者を比較する体制を取るべき。疫学的な評価をしない限り、きちんと評価できない。前回の委員会で『やるつもりがあるのか、やれる体制があるのか』と聞いたが明確な回答がない。進捗状況を教えてください」と迫った。厚労省は「重要だと思うが膨大な人手が必要で難しい」。

 佐藤委員が指摘した調査は、2020年11月、日本薬剤疫学会、日本疫学会、日本臨床疫学会、日本ワクチン学会が共同声明でその必要性を指摘していたもの。

 声明は「COVID―19(新型コロナ)に対するワクチン被接種者全員を登録、追跡するシステムを構築し、接種記録の共有と接種後の転帰(経過、結果)の確認を可能とすることが必須」とし具体策も提案している。

 学会の指摘から半年、佐藤委員の指摘から3か月経っても厚労省は何ら手を打っていない。できない理由を並べ立てるだけだ。新型コロナワクチンは、正式な臨床試験を省略した「特例承認」。従来のワクチン以上に副反応の頻度・重度への警戒が必要だ。

 だが、菅政権は、接種数稼ぎのみに明け暮れてきた。原則的な感染症対策に必要な検査・医療体制整備と維持には相当の財政支出が問われる。打てば終わり≠フワクチン接種―しかも情報開示や不可欠の十分な観察・医療体制もないまま―のみで済まそうとしている菅政権の存在そのものが命と生活を脅かすリスクだ。
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