2021年10月01日 1692号

【MDS18の政策/第5回医療制度の改革―医療を商品にせず公共にとり戻す―/(3)医療崩壊の危機と製薬企業優先政策】

 2020年春から夏、多くの病院の労働者と経営の犠牲の上に新型コロナウイルス感染症患者の治療が行われてきた。「第4波」では、大阪が医療崩壊の危機に晒(さら)された。重症者が激増し、中等症向けの病床にあふれ、自宅療養中に亡くなる例も出た。「第5波」では、8月だけで自宅・宿泊療養者など全国250人、東京112人が犠牲となった(9/13警察庁)。

 医療崩壊の危機を招いたのは(1)重症病床(ICU)が少ない(2)感染症病床がごくわずか。全国で1867、東京都118、大阪府78(3)一般病院の病床に余裕がない。常に95%が患者で埋まっていないと経営が成り立たない(4)医師・看護師不足(5)医療供給体制の中核である公立・公的病院の独立行政法人化・民営化が進行し、営利経営になっていて効率的な新型コロナ患者治療態勢ができない―が主因だ。

 病床数、医療従事者数が全く不足している。「病床数は日本と比べてドイツで6倍、医療崩壊が起きているイタリアでも2倍」「新型コロナ重症者には看護師2人で対応する必要がある。人工呼吸器が扱える医師も少ない。ICUは推定6500床あるが、他疾患や手術後の回復期に使われる分を差し引くと新型コロナ重症者に対応できるのは1千床に満たない可能性も」(日本集中医療学会理事長声明、20年4月1日)や「ヨーロッパでは桁違いの重症者がありながら、この10年ほど過酷な再編合理化が推し進められたイタリアを除き医療崩壊に至っていない。病院のほとんどが公立であり、柔軟な運用が可能で、政府が数週間で一般病院をコロナ用に切り替えることができたため」(経済産業研究所上級研究員藤一彦)との指摘もある。

 政府は「総医療費抑制政策」「民営化」で安上がりの医療を追求する一方、製薬企業・医療機器企業の利益を守ってきた。必然的に人件費を含む医療機関の運営費は削られ続けてきた。新型コロナ対策でも同じだ。菅政権は医療者の拡充や病院経営の補償といった恒常的な費用増につながる政策を嫌い、その場しのぎの治療薬・予防薬の「特例承認」で済まそうとしてきた。

命よりカネの菅政権

 安倍は「新型インフルエンザ薬」アビガンを使おうとした。動物実験で催奇性が確認されたものだ。また、動物実験データも公開しないまま臨床試験に突入した「大阪ワクチン」開発は、人体実験≠ニもいうべきもの。ファイザー等の先発ワクチンも、特例承認だが、副反応の評価や副反応から被接種者を守る体制も取らず、数のみ追求している。8月4日、抗エボラウイルス薬のレムデシビルを新型コロナ治療薬として保険適用した。成人での臨床試験しか行われていないが小児への投与も可能とする。

 医療態勢拡充は将来にわたる出費となる。だから菅は一時的な出費のワクチン接種で済ましてきた。命よりカネ儲けなのだ。(続く)
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