2021年10月15日 1694号

【看板だけ取り替えた自公政権/3Aの話しか聞かない岸田は終わった=^コロナ補償、格差解消は夢の夢】

 「菅首相のままでは衆院選は戦えない」―自民党は野党転落の危機感から、総選挙を前に首相を岸田文雄にすげかえた。だが、市民の怒りを買ったコロナ対策をはじめ安倍・菅政権の政策は変わらない。それどころか、岸田新政権はこれまでの政治腐敗を隠ぺいする役割を負う。市民がこの腐敗継承政権に審判を下す時は近い。

市民の怒りの源は変わらず

 菅義偉が市民の怒りを買ったのはなぜだったのか。「コロナ最優先」と政権に就いた昨年の9月以降、感染拡大の波が3回やってきたが、緊急事態宣言の繰り返しで、ワクチン接種以外に策はなかった。

 逆に「安心安全」と五輪強行。自宅死亡者まで生み出したにもかかわらず「明かりが見えてきた」と能天気な言葉を吐いて、悲惨な現状に向き合うことをしなかった。これが怒りの源だ。

 では、岸田文雄首相はどうするつもりなのか。

 岸田は総裁選に向けた政権構想(9/2)の「3つの政策」の一つに「コロナ対策4本柱」を掲げた。▽医療難民ゼロ▽ステイホーム可能な経済対策▽電子ワクチン接種証明(ワクチンパスポート)活用・検査の無料化拡充▽感染症有事対応の抜本的強化。そしてコロナの司令塔「健康危機管理庁」設置をうたう。

 特段目新しいものはない。要は岸田にやれるのかだ。

 たとえば「医療難民ゼロ」。国公立病院のコロナ重点病院化をあげる。厚生労働省が所管する独立行政法人「地域医療機能推進機構(JCHO)」。政府の分科会会長尾身茂が理事長を務める病院だ。全国に57の病院を持ち、合計1万4千病床がある。そのうちコロナ病床はわずか6・1%、870床に過ぎない。やっと9月30日になって、東京城東病院をコロナ専門病院とし50床増やしたのだが、見過ごせない背景がある。

 JCHOの57病院のうち城東病院を含む18病院が、厚労省が進める公的公立病院5万床削減リストに入っているのだ。

 公的医療の弱体化は著しい。JCHOは20年度にコロナ補助金230億円以上を得ているものの、医療マスクや手袋さえ事欠く病院環境を改善するのではなく、有価証券を買いあさる金儲け経営に走っているという(女性自身10月12日号)。病院経営に「効率」をもとめる政府の新自由主義政策が生み出した結果の一つだ。

 国公立病院をコロナ重点化病院にしたいなら、岸田はまず公立病院病床削減計画見直しを指示することだ。さらに「検査の無料化拡充」をするには「検査は抑えたほうがいい」と主張してきた厚労省医系技官を黙らせる必要がある。岸田にそんな覚悟と実行力があるとは思えない。

安倍・菅からの転換に覚悟なし

 岸田は「人の話を聞く力」を売りにしているが、仮に意味があるとすれば、安倍・菅政権があまりにも人の話を聞かなかったことへの批判としてだ。ところがどうだ。岸田は「安倍・麻生・甘利」いわゆる3Aの話しか聞かなかった。総裁選中の「変心」「論功行賞」人事がよく示している。

 岸田は昨年の総裁選で菅に敗れた。安倍から譲られるはずと期待しながら、捨てられた。「岸田は終わった」と言われた。今回、出馬にあたりアベノミクスを疑問視し、モリ・カケ再調査にも踏み込んだ。安倍・菅政権との違いを精一杯表明した。だが、その決意≠ヘ脆(もろ)く、すぐに軌道修正してしまった。

 モリカケ疑惑について、「国民は足りないと言っている」(9/2)と再調査の必要性を認めていたが、5日後には「再調査は考えてない」(9/7)と「変心」。安倍が激怒したと脅され、うろたえた結果だった。

 アベノミクスについてはどうか。1年前、総裁選向けに出版した『岸田ビジョン』の中で「アベノミクスで増えた富は誰の手にわたっているのか。一部の人だけがおいしい思いをしているのではないか」と疑念≠ェあることを認めていた。

 政権構想2つ目の政策「新しい日本型資本主義」に掲げた「新自由主義からの転換」。思い切った表現だったのだろうが、総裁当選後、経済政策について記者質問に答える岸田から「新自由主義」の言葉を聞くことはなかった。「一部の人だけがおいしい思い」ができるのは、圧倒的多数の人びとから富を巻き上げた結果であることに立ち入ろうとはしない。まして格差の背景にある非正規・不安定雇用に触れることはない。今や「アベノミクスは大きな成果を上げた」と力点を変えている。

 岸田が「聞く力」を強調すればするほど、時の支配層の声は聞けても、99%の貧困層の声は聞こえないのだとわかる。

あなたの一票で政権交代実現

 ひと月以上にわたる自民党総裁選の中で見せつけられたのは、「安倍・麻生対二階・菅」の権力争いだった。結局、だれがなろうと安倍・菅政権を継承する政権にしかならないことは明白だった。山盛りある「政治とカネ」にかかわる腐敗事件の隠ぺいも続く政権の役割だ。人事を仕切ったと言われる甘利明幹事長自体が収賄事件の当事者であることが何よりの証拠だ。

 だが、看板が替わるとの報道で自民党の支持率は上がった。「良いほうに変わる」ことの期待だろう。それが幻想でしかないことはすぐわかることになるのだが、事態の悪化を待つわけにはいかない。

 岸田に対しより踏み込んだ政策を突き付ける必要がある。岸田のコロナ政策「ステイホーム可能な経済対策」には、これまでの家賃支援給付金・持続化給付金の再支給程度しか策がない。コロナ被害を完全に補償・回復できる制度を大胆に提案することで、自公政権では命とくらしが守れないことを示すことができる。

 自民党の総裁選挙は有権者の1%にも満たない対象者にもかかわらず、連日マスコミが取り上げた。次の総選挙は全有権者の意思を示すものだ。こちらこそが、注目されねばならない。市民の声を聞け。あなたの1票で政治は変わる。1票を投じなければ、腐敗政権は継続する。



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