2021年11月12日 1698号

【デジタル庁 発足から2か月/警察庁もサイバー局新設へ/データ収集自体が問題】

 菅義偉前首相肝いりのデジタル庁が発足して2か月たつ。注目を浴びたのは、幹部がNTTから過剰な接待を受けていて懲戒処分になった問題ぐらいだ。そこに平井卓也初代デジタル大臣も同席していたというのだから、開いた口が塞がらない。同庁職員は民間からの出向者の比率が高く、不正の温床になりやすいとの指摘がずばり的中した。

 今年初めて創設した「デジタルの日」。コンピュータの世界が0と1の2つの数字で表現されることから、10月10日と11日がその日とされた。ホームページも開設し、啓発に努めたが、全く話題に上らなかった。

 とはいえ、あらゆる個人情報をカネに変え、市民の日常行動まで監視下に置くデジタル化の流れは、とどまることがない。

 最近の動きで看過できないのは、JR東日本が顔認識技術を用いて刑務所出所者らを検知する仕組みを導入していたこと。駅や変電所などに8350台の顔認証監視カメラを設置し、7月から運用を開始した。批判を受け、出所者の顔認識は取りやめたが、指名手配者やうろつくなどの不審行動者を対象にした運用は続けるという。標的とされた人びとだけでなく、JR利用者全員のプライバシーの権利を損なうものだ。
敵はPCやスマホの中に

 警察庁が6月、サイバー空間への脅威に対応するためとして「サイバー局」を新設する構想を打ち出したことも、市民の人間関係の把握・将来の行動予測・行動変容の促進を狙う文脈の中にある。約200人の警察官で「サイバー直轄隊」を構成し、サイバー局が指揮監督する。来年の通常国会に警察法改定案を提出し、22年度にサイバー局や直轄隊を発足させる方針だ。

 社会運動支援の情報ツールを提供するJCA-NETの小倉利丸さんは「NO!デジタルの日 市民集会」(10/11)でこれについて報告。元米CIA(中央情報局)局員スノーデンの次の言葉を紹介した。「データの保護を規制するということは(中略)データの収集はそもそも適切であり、妥当だということを前提としているし、収集自体は脅威や危険にならず、顧客や市民を常にスパイしても構わないという考え方を前提としている」

 問題はデータを保護することではなく、データを収集すること自体にある。データを収集しようとする企業や政府の行動(マイナンバーもその一つ)に歯止めをかけることだ。小倉さんは「敵は私たちのPCやスマホの中に巣食っている」とし、PCやスマホから自分のデータを盗ませないよう、面倒だが的確な防衛措置をとろうと呼びかける。さらに、個人データの提供なしに公共サービスが保障される社会システムへの転換の必要性を力説した。

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