2021年11月12日 1698号

【ミリタリー 陸上自衛隊が10万人大演習 沖縄・南西諸島ミサイル戦争へ】

 今でこそ新型コロナ緊急事態宣言は解除されているが、感染急拡大下でも、政府は自衛隊などの演習(軍事訓練)は「不要不急」には当たらないと言う。明日にでも中国による「台湾有事」や沖縄・南西諸島軍事衝突が起こるかのようだ。

 9月以降の陸上自衛隊による10万人規模の実動演習に際し、記者団の「緊急事態宣言が延長される状況の中でこの移動は適切なのか」との質問に、岸防衛相は「新型コロナウイルスが続く中であっても、必要な訓練というのは実施しておく必要がある」と答弁。「演習中、所属する方面の外に移動する隊員については事前にPCR検査で陰性であることを確認する」としたが、「貴重な検査資源」は戦争訓練にではなく、学校、保育所など今必要とする公共空間で使えと言いたい。

対中国の戦争挑発

 この間行われてきた自衛隊関連の大規模実動訓練の一つは、陸自と米陸軍による実践訓練「オリエント・シールド(東洋の盾)21」(6月18日〜7月11日)だ。矢臼別(やうすべつ)演習場(北海道)や饗庭野(あいばの)演習場(滋賀県)、日出生台(ひじゅうだい)演習場(大分県)など各地で行われてきた。7月1日からは陸自の奄美駐屯地でも行われ、米軍のパトリオット部隊が、沖縄本島以外の南西諸島で初めて展開された。「オリエント・シールド」名の日米合同訓練は1985年から継続的に実施され、35回目の今年は自衛隊1400人、米軍1600人が参加。合計3000人という数字は過去最大規模であった。

 さらに、9月15日から11月下旬まで2か月余りにわたって10万人以上という陸自の大規模演習が行われている。全部隊を対象とした演習は93年以来で、過去最大。中国海軍などの艦船を太平洋に出させないことを目的に、中国との軍事衝突をも想定した実戦訓練だ。

 演習中は、北海道や山形、香川にある師団と旅団の3つの部隊約1万2000人を九州各地に動員。陸自の車両やヘリの他、海上自衛隊と在日米軍の輸送艦艇、民間フェリーや鉄道も使い、長距離移動を行わない部隊でも、トラックに物資を積み込む手順を確かめたり携行する装備品の手入れなどをする。輸送、「事前集積」(兵站<へいたん>)を含む中国軍相手の本格戦闘予行演習だ。中国の反発は必至で、戦争挑発でもある。

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 この演習が想定する沖縄・南西諸島ミサイル戦争に住民保護の視点は全くない。ミサイルを撃ち合う戦場の島で住民が逃げ、避難する場所などどこにもない。住民にはこうした事実を隠したまま、島嶼(とうしょ)戦争計画を進めることはかつての沖縄戦の過ちを繰り返すことである。無防備地域宣言運動の精神を再び活かす時だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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