2021年11月26日 1700号

【MDS18の政策/第7回教育/誰にでも教育の機会を保障(1)/借金の原因―高学費招く公的支出の少なさ】

 MDS18の政策は、「教育の機会均等」の原則を初等・中等教育から高等教育に至る全プロセスに適用することで、多くの若者たちが数百万円の借金を背負うことなく大学などを卒業し、社会人になることを保証できる政策を目指す。

 初等教育とは小学校にあたる。前期中等教育が中学校、後期中等教育が高等学校だ。高等教育は大学(短期大学)、専門学校などを指す。「数百万円の借金」とはいわゆる「奨学金」だ。日本の公的奨学金は、返済が必要なものがほとんどであり公的教育ローン≠セ。今回の「教育」のテーマは、この高額な学費と奨学金問題に的を絞る。

40年で桁違いの高学費に

 コロナ禍は、多くの大学生が学費や生活の糧としている飲食店などでのアルバイトを奪った。振り込め詐欺の受け子など、いわゆる「闇バイト」に手を出してしまう学生も現れた。

 学生に重くのしかかるのは高額な学費だ。

 2018年の初年度の入学料と授業料の合算は国立大学で81万7800円(※)、公立大学93万1125円、私立大学115万4131円だ。1975年は、順に8万6000円、5万2915円、27万8261円だった。当時と比較すれば同9・5倍、17・6倍、4・14倍となる(文部科学省調べ)。ここには、施設整備費や後援会費といった「諸費」は含まれていない。実験・実技が必要な理工学系や医療看護系大学は「諸費」が多額となる。

 コロナ禍でクローズアップされた医師不足。医学部の費用はどうか。国立大学は他の学部と同じだ。公立では最高額は138万1800円(福島県立医大、県外者)、最低額は85万5000円。私学では、最高額は1221万5000円、最低額は461万5000円。公立・私立はこれ以外に数十万円から数百万円の「諸費」が必要だ。学費の面でも、医学部は「狭き門」だ。

 日本の高等教育の教育支出に占める公的財源の割合は44%に過ぎず、家計が51%に達する。これはOECD(経済開発協力機構)平均21%を大きく上回る(OECD調べ・2016年)。

 この公的支出の少なさが学生に大きな負担を強いている。コロナ禍による親の生活悪化と援助・仕送り減やアルバイト収入減で一層苦しむ事態となった。

(※)国が示す標準額であり、大学ごとにこの20%を上限に授業料・入学料を上乗せできる。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS