2021年12月03日 1701号

【市民と野党の共闘を強化、日常化し、来年参院選勝利で改憲を阻止しよう/MDS(民主主義的社会主義運動)集会基調】

 10月31日に投開票が行われた衆議院選挙。有権者は自公政権に失望しながらも政権交代への投票とはならなかった。この現状を直視し、どう闘いをつくっていくべきか。MDS(民主主義的社会主義運動)は11月20日から23日、地域で共に闘う市民とともに集会を開き、来夏の参議院選挙勝利にむけ方針を示した。基調報告の概要を掲載する。

自公勝利ではない

 メディアは第49回衆院選結果を「自民党単独過半数」などと評価するが、自民党は276議席を261議席に減らし、甘利明幹事長などが敗北。自民が勝利したとはいえない。

 野党は217選挙区で候補を一本化し、62議席を獲得。33選挙区では惜敗率90%以上の接戦となった。明らかに市民と野党の共闘の成果だ。しかし、野党4党(立憲、共産、社民、れいわ)の議席は123議席から110議席に減少。政権交代は実現できなかった。

 日本維新の会が自公政権批判の受け皿の役割を果たしたためだ。自公対立憲の対決選挙区では立憲57%、自民36%と無党派の支持を獲得したが、維新が加わった選挙区では維新が23%をとり、自民も立憲も票を減らした。基礎票で劣る立憲が無党派層で大きく差をつけることができなかったために議席を減らすことになったのである。



 なぜ支持が増えなかったのか。立憲民主党の共闘への消極的姿勢と立憲の支持母体である連合が共闘の妨害者となったためだ。東京12区では、連合東京は野党統一候補池内さおり(共産)ではなく公明党候補を支持した(10/28朝日)。立憲は連合に配慮し、各地の共闘でも否定的な対応が続出した。

 自民、維新の「立憲共産党」という「批判」や連合の圧力に屈服した立憲幹部の姿勢を反映して、統一候補が共産党の場合、立憲の支持者は45%しか統一候補に投票しなかった。立憲候補に共産支持者の82%が投票しているのと対照的である。政権交代が実現しなかったのは当然である。




なぜ維新が受け皿に

 維新は平然とうそをつく集団である。「身を切る改革」の例として大阪府知事の退職金をなくしたというが、そのカット分は知事報酬に加算され、知事の受取額は変わらない。公務員を敵視し、市民の行政に対する反感を組織した。現役世代重視と訴えて高齢者福祉をカットした。府立市立高校統廃合(定員割れ3年で統廃合の対象)と私立高校授業料無償化をセットにし、わずかばかりの市民への還元をてこに教育福祉をカットする。

 コロナでは東京同様多くの死者を出し、医療崩壊を起こしたにもかかわらず、「大阪コロナ大規模医療・療養センター」開設を宣伝し、「十分な対策」と見せかける。だがこの施設は、医療従事者はごく少数、市が自ら認めるように隔離ホテルの代わりでしかない。

 また、市営地下鉄民営化の一方でカジノ、万博に財政資金を集中。グローバル資本に都合のいい新自由主義政策を遂行しているのである。

 川崎市の高校3年女子生徒は「身を切る改革」に魅力を感じ、「どの党も都合の良い政策をうたうけど、財源を国債に頼るのではないか。未来の私たちに借金を残さないでほしい」(11/2朝日)と維新を支持。野党共闘が変革の展望を明確に示し、政策実現のための財源は富裕層とグローバル資本からとることを納得させなければならなかった。

グローバル資本の狙い

 「新しい資本主義実現会議」の緊急提言(11/8)は、成長戦略としてデジタル化、グリーン分野での成長による科学技術立国の推進、分配戦略としては賃上げを強調する。米中、EUに追いつくために必死でデジタル化を進めようとしている。

 マイナンバーカードの健康保険証化、コロナワクチン接種証明、郵便局の配達などで得た市民情報を民間に提供することを検討している。クリーンエネルギーを言いながら原発の維持を主張している。日本のグローバル資本にとって、低成長から脱却するためにデジタル化、グリーンへの投資が必要というのである。

 一方、市民の支持を得るため格差拡大の解決策として賃上げを口にする。賃上げ企業への税制優遇策は赤字で法人税を納められない6割の中小企業にとって何のメリットもない。介護、保育、看護の賃金引き上げは当然だが、労働者全般の実質賃金を大幅に増やさなければならない。最低賃金の大幅引き上げも必要だ。

 選挙の結果、改憲勢力は352議席、4分の3を占めた。岸田首相は「党是である憲法改正に向け精力的に取り組む」と述べ、維新の松井代表は「来年参院選と同時に国民投票を実施すべきだ」と主張した。日本維新の会と国民民主党が憲法審査会の定例日開催を求めた。改憲阻止勢力を来年参院選で大きく作り出さねばならない。

 グローバル資本と岸田政権の狙いは市民と野党の共闘の解体である。メディアは直ちに共闘への攻撃を始めた。「野党誤算振るわぬ共闘」(11/2朝日)など。世論調査(朝日)でも、参院選での候補一本化について進めるべき27%、そう思わない51%であった。

 だが、政権交代を勝ち取れなかったのは野党共闘が間違っていたからではなく、共闘の徹底が弱かったからである。東京9区で勝利した山岸一生(立憲)は「野党共闘には大きな成果があった。勝負の分かれ目は、共闘の良しあしではなく、『本気の共闘』をやり切ったかどうかではないか」。全国各地で共闘の成果は上がっている。


どう闘うべきか

 市民と野党共闘を選挙の時だけでなく日常的に強化することだ。「改憲」勢力に対し、東アジアにおける平和構築を進める闘いで勝利しなければならない。辺野古新基地建設に反対するZHAP(ZENKO辺野古プロジェクト)署名、朝鮮戦争終結キャンペーンを進めていこう。

 戦争と新自由主義への対案は根本的には民主主義的社会主義である。コロナ対策についても「市民連合と野党の共通政策」からさらに踏み込んで、公立病院を建設し医療を新自由主義の利潤原理から解放することを語る必要があった。消費税は廃止、財源はグローバル資本と富裕層への課税を具体的に示すべきであった。我々は共通政策実現のために闘うと同時にその発展を目指す。地域から新自由主義と対決し、民主主義的社会主義を展望する闘いを作り出そう。
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