2021年12月03日 1701号

【ミリタリーウオッチング 政府 国際法違反の「敵基地攻撃」を正当化/「軍事費GDP2%」のおぞましさ】

 防衛省は11月12日、「防衛力強化加速会議」と称する組織を立ち上げた。これは、昨年のイージス・アショア配備断念以来、政府・自民党が執拗に追求してきた「敵基地攻撃能力」の保有を目的とするものだ。議長は岸信夫防衛相、その他防衛省や自衛隊の幹部らで構成する。岸田首相は、国の軍事・外交の基本方針「国家安全保障戦略(NSS)」や2018年に策定された「防衛大綱」の改定も表明している。

 「敵基地攻撃」について、政府・自民党などは「自衛権」として正当化を図る。

 だが、国連憲章では「相手国による武力行使の発生事実」が自国の自衛権行使の前提である。相手国が自国に武力攻撃を加えそうだからとして、先に相手(敵)の基地を攻撃することは国際法上認められない。相手が現に武力攻撃に着手して初めて「自衛権の発動」が認められるとされるが、その「自衛のための行動」は、武力攻撃を撃退するために必要な限度内に限られ、かつ攻撃行為と均衡を失するものであってはならない。また、軽微な攻撃に対して大規模な軍事行動を起こすことも許されない。

 これらは幾多の戦争を経て国際法として確立されたものだ。にもかかわらず昨年7月、自民党政務調査会は、憲法も国際法も無視し、「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力を保有するのは専守防衛の範囲内だから認められる」とする「提言」を出した。この安倍・菅路線を岸田もそのまま継承している。

 11月9日、第二次岸田内閣発足の前日、バイデン米政権で対アジア外交の中心的役割を担うダニエル・クリテンブリンク国務次官補が東京で共同通信と単独会見を持った。この会見で次官補は、中国への強い懸念を示した上で、日本の軍事費について「米国は増額を歓迎すると明確に言いたい」と強調。「中国を抑止し、台湾有事を回避するため」として安全保障分野での岸田政権の役割拡大に期待感を示した。

軍縮の声を聞け

 歴代自民党政権は表向きは「防衛費は国内総生産(GDP)1%が目安」とし、その突破は容易ではなかった。ところが、今回の衆院選へ自民党は『政策バンク』で「(防衛関係費の)2%以上も念頭に増額を目指す」と初めて明記した。

 岸田は「私の特技は人の話をよく聞くこと」と「聞く力」を盛んに自慢する。東アジアでの軍事力や派兵の強化にもっと金も人も出せ≠ニいう米国や資本(軍事産業)の話を誰よりもよく聞いているのだ。

 12月6日から臨時国会が始まる。我々は岸田に、軍拡でなく軍縮、命を守るコロナ対策に力を入れろと迫り、聞かせる必要がある。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会
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