2021年12月03日 1701号

【担当者が説明もできない文書訓告などありえない 小学校長「提言」処分取消へ市会に陳情 大阪市 教職員なかまユニオン・松田幹雄】

 コロナ禍に見舞われた今春、維新大阪市政はオンライン授業等を学校現場の納得も準備もないまま強要した。これに対し、大阪市立木川南小学校の久保敬校長は5月17日、松井一郎市長に現場の混乱を訴え市の教育のあり方を問う「大阪市教育行政への提言」を送付した。「提言」が広く共感を呼んだことに慌てた大阪市教育委員会は「信用失墜行為」の名で久保校長に文書訓告を行った(8/20)が、学校現場や市民から憤りと理不尽な処分撤回を求める声が広がっている。教職員なかまユニオン・松田幹雄さんに報告を寄せてもらった。

処分理由が判明

 大阪市教委は8月20日、多くの人たちの「処分するな」の声を無視して久保敬校長に対する文書訓告を発しました。私たち教職員なかまユニオンは同27日「文書訓告に抗議し、撤回を求める要請並びに質問」を提出。11月1日、その回答についての「協議」を行いました。「協議」にあたっては、4つの質問に対する回答にその意味を問う再質問を提出し、まず文書訓告の文面の意味を徹底して明らかにすることをめざしました。その中で以下3点が明らかになりました。

(1)意見表明を行った行為そのものに対して文書訓告をしたものではなく、校長の「提言」の内容を問題にしたものであること。

(2)今回の文書訓告は、地方公務員法第33条(信用失墜行為の禁止)「職員は、その職の信用を傷つけ、または職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」違反を理由としていること。

(3)具体的には、「子どもの安心・安全に関する教育委員会の対応に懸念を生じさせたこと、緊急事態宣言中の学校運営に関する通知に基づき尽力する関係教職員らの努力を蔑(ないがし)ろにしたこと、児童・生徒を商品に例え不適切な表現をしたこと、(それにより)日々業務に励む関係教職員らの努力を蔑ろにしたこと、提言を拡散させたこと」が信用失墜行為に該当するとの判断によるとのこと。

 文書訓告は、教育のあり方を問う「提言」の内容を問題として出されていたのです。私たちは、文書訓告の文面とそれが指摘する久保校長提言の文面を比較し、具体的に、どこが「独自の見解」で、どこが「関係教職員らの努力を蔑ろにしたこと」になるのか追及しましたが、担当職員は答えることができませんでした。

 私たちは「そもそも、信用失墜行為かどうかの判断を行うのは、市民のはず。市民は、文書訓告を出した市教委こそ信用失墜行為を犯していると思っている」と強く抗議しました。

努力の結晶 公開文書

 11月16日には、大阪市会に「大阪市立小学校校長の『提言』にかかわる文書訓告取消の検討を求める陳情書」を提出。教育こども委員会所属議員に届けるよう、文書訓告全文、久保校長「提言」、久保校長顛末(てんまつ)書、同提言にかかわる港中学校名田正廣校長「提言」、それに添付された255人の意見書、市の文書訓告発表ホームページに寄せられた180通の抗議文を市会事務局に託しました。

 文書を作成した人はもちろん、公開請求し誰でも見られる形にした人など、多くの市民の努力で市議会に持ち出せるようになったものです。いったん行政が決定したものはくつがえらない∞9月議会ですでに論議≠ニいわれるなど、採択はむずかしい状況があることは分かっていますが、誰の目にも理不尽が明らかなこの処分を取り消させることは、維新の教育支配を打ち破る一歩になります。

 また、この陳情を通して、市民の声に注目が集まることが、「提言」に象徴される現場や市民の声を無視して進められている「次期教育振興基本計画」に歯止めをかけることにつながるのではないかと思っています。

 そのための市会議員への働きかけを続けます。陳情審議の教育こども委員会は、12月1日です。



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