2021年12月03日 1701号

【未来への責任(336) 遺骨返還問題に大きな変化】

 軍人軍属の遺骨奉還に関連し、2つの大きな局面変化が起きた。

 一つ目はタラワ島(太平洋中部キリバス)の日米韓共同鑑定の進展である。タラワ島で戦死した日本側の4713人中、1200人が韓国・朝鮮から動員された若者であった。今まで米軍管理のアジア系遺骨は日本に移管された後、すべて日本兵として焼骨されてきた。

 2019年3月、韓国はタラワ島の韓国人遺族のDNA鑑定で184人の鑑定を行った。同年10月24日に1名の遺族と遺骨の合致を発表。日本は2020年4月1日より硫黄島・タラワ島の遺族に鑑定を呼びかける。タラワ島の場合、400人が鑑定を申請し2020年8月に1人、9月に2人目の遺族が判明した。硫黄島でも同年12月に2人が判明した。

 この結果、日本では2021年10月1日から太平洋地域の遺族の鑑定募集を始めるという前進につながった。韓国でも4月に太平洋地域の遺族へのDNA鑑定募集が呼び掛けられた。そして、日韓とも遺骨をふるさとに帰すための「安定同位体比検査を始める」と言い出した。

 二つ目は、日本国内で遺骨問題への関心が大きく広がったこと。沖縄県南部土砂を辺野古新基地の埋め立てに使うことを許さない闘いが世論を大きく喚起しているからだ。南部土砂を使うことに反対する地方議会意見書は沖縄県外で110議会を超えた。

 9月14日、厚生労働省・外務省・防衛省3省とガマフヤー(沖縄戦遺骨収集ボランティア)や日韓遺族との意見交換会が行われ、ズーム参加も含め約150人が参加した。沖縄戦韓国人遺族170人の照合要求に加え、太平洋地域のDNA鑑定募集事業に11人の韓国人含む52人の戦没者遺族が集団申請した。しかし、厚労省は韓国人の遺骨について「遺骨の返還の仕方(条件)について、合意ができていないから何もできない」と言う。
 韓国からズーム参加した太平洋戦争被害者補償推進協議会のイ・ヒジャ代表は「交渉して何年もたつが何も変わらない」と怒りを示した。

 NHKは韓国人11人の集団申請を全国放送で伝えた。韓国メディアは「遺骨になっても韓国人を差別している」と報道した。返還の仕方について、今後、厚労省・外務省と議論していくことになる。

(戦没者遺骨を家族のもとへ連絡会 上田慶司)



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