2021年12月03日 1701号

【文通費問題で維新劇場/「身を切る改革」はポーズだけ/税金横流しの悪質手口】

 維新の「身を切る改革」とは、自分で自分に領収書を切ることだった―。日本維新の会の新人議員が告発した国会議員の文書交通費問題がメディアをにぎわせている。維新としては「改革」アピールと野党バッシングの一石二鳥を狙ったのだが、ブーメランが自身に刺さる結果となった。

野党攻撃の材料

 国会議員に支給される文書通信交通滞在費(文通費)に注目が集まっている。発端は、10月31日投開票の衆院選で初当選した日本維新の会の新人議員による指摘だった。10月分の文通費が同月に活動実績がない新人や元職の当選組にも満額支給されたのはおかしい、と言うのである。

 すると、維新副代表の吉村洋文・大阪府知事がすかさず反応し、「これが国会の常識。おかしいよ」とツイート。その後も「『経済的弱者の救済を』と声高に叫ぶ政党も、結局、自分達の厚遇に関しては、みんなで仲良く下向いて知らんぷり。真っ先に税金から非常識な分配を受けている。どこの政党も知らんぷり」などと連続投稿した。

 維新創業者の橋下徹も参戦した。「立憲民主も国民民主もれいわも共産も起きてまっか?(中略)丸取りならあんたらの言うこと信用ならんで!」とツイートしたのを皮切りに、出演したテレビ番組で野党を挑発しまくった。

 文通費は「公の書類を発送」したり「公の性質を有する通信」などのために支給される国会議員の手当のこと。毎月100万円が非課税で支給され、使途の報告や公開の義務はない。

 給料にあたる歳費とは異なり、文通費には日割り支給の制度がない。在職1日(正確には4時間弱)の新人議員らに1か月分の文通費をしていいのかという疑問はもっともで、制度の見直しは当然だろう。

 しかし、維新がいくら「我こそは“身を切る改革”の実践者なり」とアピールしても、それは虚像にすぎない。事実、文通費追及キャンペーンの口火を切った吉村知事本人も「実働1日で100万円丸取り」を行っていた。

吉村も丸取り済

 吉村は「国会議員の特権」を初めて知ったかのように騒いでいるが、自分も衆院議員だった。大阪市長選に出馬するため2015年10月1日に辞職。その際、同月の文通費100万円を受け取っている。

 吉村の場合、わざわざ月初めの1日に辞職をしなければならない理由はなかった。文通費の丸取り目当てでこの日を選んだと見られても仕方がない。そもそも国会議員を辞める者が100万円を何に使うというのか。吉村は一切使途を明らかにしていないのである。

 この件を嗅ぎつけられた吉村は慌てて「全額寄付する」と表明。批判に対しては「ブーメラン刺さってますけど、我々が大騒ぎしたから与党も返金することを決めた。社会が良くなればそれでいい」と、成果を強調してみせた。

 一部のワイドショー番組やスポーツ新聞は、吉村の態度を「潔い」だの「すがすがしい」だのと持ち上げている(関西のニュース・情報番組では、これが通常運転なのだが)。文通費をめぐる維新の「都合の悪い事実」には決して触れようとしない。

自分で自分に領収書

 維新は文通費の使途を各議員が自主公開しているのを売りにしている。だが、その中身はというと詐欺的な流用のオンパレードであった。所属国会議員の多くが文通費を政党支部や自身の資金管理団体に寄付し、自分宛てに領収書を出していたのである。

 維新はこのやり方で、受け取った文通費総額約7・6億円(15年10月〜19年3月)のうち約5・7億円を「移し替え」ていた。用途が決まっている文通費を脱法的な手法で流用し、私的な政治活動や選挙活動に使う―。これを税金のかすめ取りというのである。

 この問題が朝日新聞の報道などで明るみに出ても、維新は一向に態度を改めなかった、たとえば、馬場伸幸幹事長の今年7月分の文通費の使途をみると、馬場が支部長を務めている「日本維新の会大阪府第17選挙区支部」に約72万4千円を寄付している。

 そもそも維新には文通費より先に返納すべきカネがある。国会議員の数などに応じて金額が決まる政党交付金だ。未使用で残った交付金を国庫に返納できる状況にあったにもかかわらず、基金をつくりカネをため込んできたのである。

   *  *  *

 メディアが飛びつきそうな「バトル」を仕掛け、自分が「改革の旗手」であることをアピールする―。文通費問題は維新流劇場政治の典型例だ。連中の手口になじみのない関西在住以外の皆さんは、よく覚えておいてもらいたい。 (M)

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