2021年12月10日 1702号

【みるよむ(604)2021年11月27日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラク社会をむしばむ宗教への寄付と腐敗】

 イラクではイスラム教をはじめ宗教に対して多額の寄付が集まる。ところが膨大な金額の寄付金が汚職に使われている。2021年9月、サナテレビはこの腐敗について報道した。

 イラクは近代国家の建前から、宗教に寄せられた寄付金を私的利益のために投資することを禁止している。

 政府は、宗教、宗派ごとに「シーア派寄付関係省」などの省庁を設置して寄付金を宗教活動のみに使うように監督している。しかし、現場の実態は違う。レポーターは「腐敗があらゆる面からすべての寄付をむしばんでいる」と指摘する。

 イラクで最大の信徒を持つイスラム教シーア派は2021年に8290億ディナール(約647億円)の寄付を集めた。スンニ派も3090億ディナール(約241億円)を集めている。農業省や、産業省、住宅省などの省庁の予算に匹敵する金額だ。だが、「その寄付金の大部分は腐敗階級の手元に行く」という。

 ある国会議員は、シーア派の寄付金が首都バグダッド北部のビルに2300億ディナール(約180億円)も投資されたことを暴いた。明らかに法律違反だ。

国家資金も盗み取られる

 監督する省庁でも腐敗が進んでいる。スンニ派寄付関係省の局長は「アル・クーラ・モスクを自分の住み家とし、まるで自分の帝国のようにした」。この人物は「5つ星のホテルと大規模な集合住宅を建て、護衛付きジムの基地を造り、敷地内では警察が人びとを尾行している」という。施設の建設費用は500万ドル(約5億6000万円)だ。

 汚職が横行しているために、同省の財政赤字は280億ディナール(約22億円)に達する。新型コロナ危機に対応するべき資金が盗み取られているのだ。

 サナテレビは、宗教の名によるあきれるばかりの汚職と腐敗の実態を明らかにして、政教分離の民主的な社会を作ろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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