2021年12月17日 1703号

【沖縄辺野古/知事が設計変更申請不承認/国は知事の決定に従え】

 沖縄県玉城デニー知事は11月25日、同県名護市辺野古で進む新基地建設事業にかかる変更承認申請に不承認の決定を下した。知事の決定を支持し、国を決定に従わせる運動を強めなければならない。

 昨年4月、沖縄防衛局は「公有水面埋立法に基づく普天間飛行場代替施設建設事業の埋め立て用地用途変更・設計概要変更承認」を沖縄県知事あて申請していた。この申請に、県はのべ39項目452件の質問を行い、専門家に諮ったうえで不承認の決定を行い国に通知した。

必要な調査すら実施せず

 以下、不承認の理由の要旨とポイントを示す。

☆不承認理由の要旨
(1)設計概要変更が必要な正当な事由がない

 変更に至った理由はやむを得ないと認められるものの、(2)(4)のとおり変更内容についてはやむを得ないと認められない。

(2)埋め立ての必要性について合理性が認められない

 工程も含め大幅に変更となっている。地盤の安定性に関して、必要な調査が実施されておらず、災害防止に十分配慮されていない。よって、埋め立て地の利用可能性が不確実であり、埋め立ての動機となった普天飛行場の危険性の早期除去にはつながらない。

 これらのことから、「埋め立てによらなければ土地利用の目的が達せられるか」「公有水面を廃止する価値が認められるか」「今埋め立てを開始しなければならないか」「埋め立ての用途に照らして適切な場所か」について審査した結果、合理性があるとは認められない。

(3)国土利用上適正かつ合理的であると認められない

 集落等の上空を避けており、埋め立て地は適切な場所である。だが軟弱地盤の確認による設計概要の変更は災害防止に十分配慮されているとはいえず、埋め立ての位置について合理性がない。

(4)環境保全及び災害防止に十分配慮されていると言えない

 ジュゴンに及ぼす影響について適切に情報が収集されていないため、適切な予測がされておらず、また、影響を回避・軽減させるための措置が的確に検討されていない。地盤改良工事に伴う環境への影響に関する情報が適切に収集されていない。埋め立て地の護岸の構造、埋め立て区域の場所の選定、地盤改良の工事方法選定が、埋め立て地の使用目的に照らして災害防止に十分配慮されていない。

理由のポイント

 沖縄防衛局が設計変更申請せざるを得なかったのは、マヨネーズ状≠ニ表現されるほどの軟弱地盤が海底に存在するためだ。同局はその事実を隠して当初の埋め立て免許を得ていた。後にその存在が明るみになったが、同局は埋め立て工事開始を強行し、工事継続のために必要となった時点で変更申請へと至った。



 軟弱地盤の改良には、サンドコンパクションパイル工法を用いる。この工法は、埋め立て地と建設予定の施設を支えることができる「支持層」まで軟弱地盤を貫通するパイプを打ち込み、そのパイプに砂を詰め込みながらパイプを引き抜くことで「砂の柱」を立てるというもの。砂の柱は直径1・6〜2mで、1万6000本に上る。この地盤改良で工事は当初予定から大幅に遅れ長期化する。

 加えて、最大の問題はその実効性だ。

 今わかっている軟弱地盤の最深部は深度90mに及ぶ。対して、同工法が施工できる国内の船の能力は、深度70mまでに過ぎず、施工実績は65mまで。軟弱地盤を貫通し支持層に到達するには各々20mと25m足りない。

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 施設局はこの地盤改良について、安全であることを示さなければならなかった。だが、深度90mの場所でのデータをとることはせず、周辺のデータからの評価を示すのみだった。この事実を含め沖縄県は「災害防止に十分な配慮をしていない」とした。

 ジュゴンについても防衛局は必要な調査を避けている。例えば、作業船の航行や杭打ち工事で発生する水中音によるジュゴンへの影響は、工事が強行されており実測値で評価可能だ。にもかかわらず防衛局は、工事開始前の予測値での評価にとどめた。また、1万6000本もの杭打ちで周辺の海底は盛り上がり地形が変わるが、環境への影響調査を実施していない。

 軟弱地盤改良工事後の強度、環境への影響を評価するための調査が不十分なので完成は不確実。工事の完成が不確実なら「普天間飛行場代替施設」という埋め立て工事の目的の達成も不確実だ。地盤改良工事の追加で、米軍への供用は早くて12年後で「普天間飛行場の危険性の早期除去」という目的も達せられない。設計変更と埋め立て工事の必要性に合理性はない。

 以上が主な不承認理由だ。

 沖縄県の審査は護岸・港湾の基準で災害防止性を審査している。だが、建設しようとしているのは空港だ。沈下・陥没した際に、岸壁よりも滑走路の方が災害の規模は大きい。まして、発着するのはジェット燃料とミサイルを抱きかかえた軍用機だ。港湾基準の審査は、市民目線では災害防止の観点からはかなり甘めだ。それでも、設計概要変更は不承認だ。工事を進めてよい道理はない。

全国から不承認支持を

 沖縄防衛局は、環境対策など埋め立て工事の条件について数々の違反を繰り返し、誠実に取り組んでこなかった。このような無謀な工事について、翁長雄志前知事の県政以降は必要な指導を行なったうえで埋め立て承認取消などの手を打ってきた。だが、沖縄防衛局をはじめ国は、行政不服審査法に基づく不服申し立てや地方自治法に基づく国の関与(実質的には不当な介入)などで対抗してきた。

 行政不服審査法は「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるため」のもの(第1条)。国や地方公共団体などを対象としていないことも明示している(第7条)。

 にもかかわらず、沖縄防衛局はこの制度を悪用し、18年の承認取消については国土交通相に執行停止を申し立てた。この違法な申し立てのわずか3日後、全国の行政法学者110人は「国民のための権利救済制度を乱用し、法治国家にもとる」との批判声明を発した。だが、国交相は防衛局の申し立てを丸呑みした。

 今回もまた、沖縄防衛局は12月7日、審査請求を行った。断じて許されない。

 玉城知事の不承認決定を受け、全国で不承認支持の声を広げるブルーアクション≠ェ展開されている。本土の反対運動を強化し、沖縄防衛局、国交相に圧力をかけ、県の決定に従わさせなければならない。

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