2021年12月17日 1703号

【MDS18の政策 誰にでも教育の機会を保障(2)/増える家計負担、減る賃金】

 高学費に加え、塾など学校以外の教育費用を含めると、幼稚園から大学まで公立(国立)で通しても1043万円、大学だけ私立であれば1261万円、高校から私立では1415万円、すべてが私立であれば2547万円が必要だ(私立大学は文系、金融広報中央委員会推計)。自宅外通学なら、住居費・光熱水費・食費が別に必要となる。

 だが、家計は高学費の負担に追いついていない。1世帯当たりの平均総所得金額は1994年の644万円をピークに、2015年には545万円と20年で100万円も下がった。18歳以下の児童がいる世帯が比較的所得は高いがそれでも96年の781万円をピークに15年は707万円だ(厚労省・国民生活基礎調査)。「子育て世代が比較的高い」といっても、公的住宅政策の欠落で子育てに必要な住環境をそなえた安価な賃貸住宅は乏しく、持ち家志向とならざるを得ない。住宅ローンも抱えているのだ。

 また、この年齢層の2人以上世帯で貯蓄ゼロは20代16%、30代8%、40代14%、50代13%(金融広報中央委員会・20年1月)。これらの人はそもそも、住宅ローンも組めそうもないし、高学費に耐えられない。

 実際、親の所得と大学進学率には明確な相関がある。45歳〜54歳の有配偶者男性の平均所得が最も低い沖縄県の大学進学率は40%を切り、最も高い東京都の大学進学率は70%を超える(Newsweek、20年4月)。調査した教育社会学者の舞田敏彦博士は、教育基本法に照らして「実質的な違法状態だ」と評している。21年、新語・流行語大賞8位となった「親ガチャ」は、親の所得がもたらす子の生活への影響も反映したものだ。



 原因は低賃金にある。97年から18年の11年間で日本人の1時間当たり名目賃金は8・2%、購買力を示す実質賃金では10%の減少だ。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中では最下位グループだ。だが企業は儲けを膨らませ続けてきた。

 新自由主義がもたらした高学費と低賃金が、学生に借金である「奨学金」を強いる。(続く)

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