2021年12月17日 1703号

【たんぽぽのように(21) 国家保安法と差別禁止法 李真革】

 2021年12月1日は「国家保安法」の73歳の誕生日である。国家保安法は南側だけの単独政府樹立を推進した李承晩(イスンマン)と右翼政党により、1948年11月9日に発議され、わずか22日後の12月1日に公表、施行された。帝国主義日本が共産主義運動や朝鮮の独立運動などを弾圧した「治安維持法」がその母体だ。

 戦争が終わり、日本では治安維持法が廃止されたが、朝鮮半島南部で華やかに復活した。70年以上も民主主義を脅かし、思想と表現の自由を抑圧し、無数の人びとが弾圧され命を失った。

 ところが、冷戦時代が幕を閉じ、南と北の政治リーダーが何度も会って平和と共存を話しても、国家保安法は消えなかった。「愛の不時着」というドラマが朝鮮民主主義人民共和国を美化するとして国家保安法違反で告発されることが2021年にも起きている。

 最近、10万人が国家保安法廃止に関する請願を国会に提出したが、与野党は2024年5月29日までの審査延長に合意した。この合意には「差別禁止法」の制定に関する議論も含まれた。来年の大統領選挙と地方選挙を控え、あえて議論を作らないということだ。

 2007年に初めて発議されたが全く進展のない差別禁止法には、「政治的性向・前科・性的指向・宗教に対する差別禁止」の項目が含まれている。右翼陣営はこの法律が制定されると、北の主体思想を信奉する勢力が自由に赤化活動を行い、「性的指向に対する差別禁止」条項で「キリスト教会でさえ聖書通りに罪(同性愛)を罪と教えられなくなる」と主張する。レッドコンプレックスと性的少数者に対する嫌悪が連結され、国家保安法と差別禁止法の2つの法律は繋がる状況だ。

 軍事独裁政権を倒し、いわゆる民主党所属の大統領が3人も当選し、現在の国会の過半数を与党が保有しているにもかかわらず、国家保安法廃止の議論が再び延期されたのは何を意味するだろう。ろうそく≠ナ誕生したと言われる文在寅(ムンジェイン)政権の下でも、国家保安法で拘束、起訴される人びとが依然として存在するのはどういうことだろう。

 差別と嫌悪がない世界のために最も消えなければならないのが国家保安法であり、最も必要なのは差別禁止法である。絶対多数の議席を持っていても、様々な言い訳をしながら何もしない人たちを支持する理由はどこにもない。 (筆者は市民活動家、京都在住)
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