2021年12月17日 1703号

【読書室/「日本」ってどんな国? 国際比較データで社会が見えてくる/本田由紀著 ちくまプリマー新書 920円(税込1012円)/誰もが対等な人間であるために】

 「日本はどんな国なのか」と問われたとき、どう答えるか。当然、一様でない答えが出てくるだろう。だが、答えは人それぞれ≠ニ結論するのは、現状に目を向けない態度であり、日本の現実を正面から見つめることが必要だ。

 本書は、国際比較データを駆使して人びとの生活に関わる社会領域における日本の状況を明らかにするものだ。家族、ジェンダー、学校、友だち、経済・仕事、政治・社会運動、「日本」と「自分」の七つの領域で日本の姿を映し出す。

 第1章は家族。「日本の著しい特徴は、いまだに『男性(父親)は仕事、女性(母親)は家事育児である』という性別役割分業が濃厚であること」が改めて浮かび上がる。第2章で示される際立ったジェンダー不平等も一目瞭然だ。

 著者の指摘は厳しい。たとえば、学校について「新しく社会に参入してくる世代の、様々にありえた個性やスキルを、押しつぶすように『学校』は作用してきたのではなかったか」と言う。こうした現状の背景にある経済・仕事やその変革に不可欠の政治・社会運動も含め、分析結果から「日本の姿が『相当やばい国』である」ことが分かる。

 視点は明快だ。「誰もが対等な人間であり、他者から敬意を払われ、自分の望みを表明したり、行動に表したりできるような社会にしてゆく」―分析もそのためだ。著者は「すべての人が自由にならない限り、だれも自由にはなれない」と米公民権運動のファニー・ルー・ハマーの言葉を引用する。民主主義への取り組みは確かに難しく果てしない。だからこそ、あきらめてはならない。これが本書のメッセージだ。 (I)
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