2021年12月31日・2022年1月7日 1705号

【日米2+2/対中国「新冷戦」構造のもくろみ/思いやり予算増額 共同訓練費も負担/軍産複合体を封じる国際連帯の闘いを】

 日米両政府は「中国の脅威」を口実にした軍事費拡大に余念がない。2022年1月7日に開催予定の日米安全保障協議委員会では、あらためて日米軍事一体化が強調される。対中国「新冷戦」による軍拡路線を止めるには、新基地建設をはじめとする軍備拡大を許さず、平和共存、互恵外交を押しつける国際的な運動が必要だ。

日米軍事一体化

 米国政府の国務・国防長官と日本の外務・防衛大臣による日米安全保障協議委員会(「2(ツー)プラス2(ツー)」)が1月7日に開催される。会議では、22年から5年ほどの間の在日米軍駐留経費の日本の負担額などを定める特別協定を締結する。報道では、毎年平均100億円増額、5年間で総額1兆円を超える額で合意するという。

 前回(21年3月)の「2+2」では、トランプ前大統領の4倍化要求もあり、期限を迎えていた特別協定を1年延長して、継続協議としていた。さすがに4倍とはならないものの、日本側の提示した増額幅でおちついたというわけだ。

 この駐留経費はいわゆる「思いやり予算」(日米地位協定による支払義務のない別経費)であり、1978年以来、米軍基地内の水道・電気・ガス代や労働者の賃金等を負担。ボウリング場やゴルフ場の整備にも使われている。米軍の肩代わりに厳しい批判があるにもかかわらず、政府間の協定で増額できてしまうのだ。

 今回、日本はトランプ前政権の「一方的要求」とは違うバイデン政権の「同盟国重視」に応じ、積極的役割を果たそうとしている。その点で特に見過ごせないのが「共同訓練費」を新設したことだ。日米共同軍事演習にかかる米軍の費用を負担するという。

 日本政府は「中国の軍備拡張など厳しさを増す安全保障環境」を理由にあげる。年中繰り広げられている日米共同軍事演習。共同訓練費の負担は侵略軍への変貌を急ぐ自衛隊が米軍に払う授業料=Bつまり、日米対中国の対立構造の前線に立つというのである。

米国も軍事費拡大

 「中国の脅威」はいまや日米両国が軍事費拡大を正当化する枕詞(まくらことば)になっている。

 米国では22会計年度(21年10月〜22年9月)の軍事費の大枠を定めた国防権限法案が上院で可決(12/15)。下院はすでに通過しており、大統領が署名すれば成立する。その額は21年度比約5%増7777億ドル(約88兆6千億円)。バイデン政権が要求した7529億ドルを議会が増額修正した形だ。

 特にインド太平洋での軍事能力を高める「太平洋抑止イニシアチブ(PDI) 」には71億ドル。PDIは中国に対する軍事的優位性を維持するための新たな軍事計画として21年22億ドルでスタート、1年で3倍以上になった。23年度もさらなる増額が予想される。

 また、議会は「台湾の自衛のための支援継続」を訴え、22年に米海軍が主催する世界最大規模の軍事演習「環太平洋合同演習(リムパック)」への台湾招待を提言するなど、中国を挑発する内容になっている。

 このPDIの最前線に日本の基地がある。南西諸島へのミサイル配備は、米軍と一体化する自衛隊の姿をよく表している。そして、日米共同利用が公然化している沖縄・辺野古新基地の建設が最優先に位置づけられているのだ。

つくられる「脅威」

 日米両政府が現在の辺野古新基地建設計画を決めたのは、05年10月の「2+2」だった。06年5月の「2+2」では、新基地の建設は「14年までの完成が目標」と確認している。目標からすでに7年が経過したが、防衛省の試算でもさらに10年を費やさねばならない。

 この間、基地の位置づけも役割も大きく変わってきている。05年の「2+2」で確認した「日米同盟―未来のための変革と再編」には「中国の脅威」などひと言もなく、あるのは「テロとの闘い」と「イラクへの支援」だった。インド太平洋や南アジアの地域への関心事は津波被害や地震後の災害支援だ。

 経過をたどれば、その後、中国は経済成長を遂げ、軍備を増強してきた。米中経済摩擦から「中国脅威」論が生まれ、軍事的威圧のために「台湾有事」が口にされはじめた。対ソ連「冷戦」時代に形成された米国の軍産複合体は、ソ連崩壊後も対テロ戦争を掲げ、中東での支配戦略を維持してきた。アフガニスタン、イラクからの米軍撤退後の新たな戦略が対中国「新冷戦」体制というわけだ。

 1970年代、中ソ対立を利用して、日米政府は中国との国交を回復しソ連をけん制するとともに、中国に安価な労働力を求め資本投下してきた。当時は「台湾は中国の一部」とする中国政府の主張を受け入れ、尊重してきた。今ここにきて、台湾問題を中国の国内問題から国際問題へと引き出すのは、東アジアの平和構築に逆行しあえて軍事的緊張をかき立てるものだ。「台湾有事は日本の有事」(安倍晋三元首相)と言い出すなど、無理にでも危機感をつくり出したい戦争屋のたわごとに他ならない。


辺野古阻止をともに

 岸田政権は21年度補正予算で7738億円の軍事費を追加。当初予算と合わせて6兆1078億円、GDP(国内総生産)の1・09%となった。この補正予算の中には、辺野古新基地建設費801億円が計上されている。

 沖縄県の埋め立て設計変更不承認の決定で、全く工事の見通しが立たない。軟弱地盤対策ができず完成できない基地建設にさらに予算を投入するなどもってのほかだ。仮に造り上げたとしても、地震でいつ崩壊するかもしれない滑走路が使えるわけがない。

 軟弱地盤や活断層問題は米政府関係者に届いている。沖縄県ワシントン事務所の働きもあり、20年6月下院軍事委員会即応力小委員会で国防権限法の審議の中で「活断層や軟弱地盤、地震」や「サンゴ、ジュゴンなどへの影響」に対する解決策の報告を国防長官に求めるよう採択されている。

 事実を隠し、ひたすら軍事緊張をあおる日米両政府を追いつめる市民の闘いが必要だ。「辺野古基地建設不可能」の事実を日米両市民が拡げること、軍事費削減の声を合わせる意味は大きい。「中国の脅威」をあおるのではなく、平和共存、互恵的関係を作ることだ。

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