2021年12月31日・2022年1月7日 1705号

【MDS18の政策 第7回 教育 誰にでも教育の機会を保障(3)/金融商品化する奨学金】

 日本は国際的にみて教育への公的支出が極端に低いことが原因で高学費となっており、家計への負担が大きい。また、賃金は国際的にみて低く、30年前との比較では「主要国」が軒並み60%超の賃上げ率となっているにも関わらず日本だけが賃下げとなっている。学費高騰と家計のひっ迫が「奨学金」に頼らざるを得ない要因だ。

 その奨学金制度は、学生の負担増大の方向へと改悪が重ねられてきた。

 まず、1984年に旧日本育英会が有利子奨学金を創設した。この時点では「原則無利子、特例有利子」だった。次に99年、教育職や研究職に就くことを条件とした返還特別免除が廃止された。続いて、奨学金需要に応えるため貸付金額が大きい有利子奨学金が導入された。以降、奨学金の主軸は無利子から有利子へと移行していく。

 そして2004年、様々な政策分野で「民営化」と「自己責任」を基本とする新自由主義政策を強力に進めた小泉内閣の下で、旧日本育英会が廃止され、奨学金事業は独立行政法人日本学生支援機構(JSSO)へと統合された。その際の中期目標は「5年で延滞額半減、前年比15%減」で未達成なら奨学金制度廃止もあり得るとの厳しいものだった。07年には「回収率向上策」として債権回収の民間委託を推進した。

厳しい取り立て

 返済が滞れば、延滞金は年利10%(批判を受け現在は5%)となり、返還金は延滞金に優先的に充当され元金は減らない。また、延滞金を解消しなければたとえ生活保護を受けていても返還猶予は適用されない。延滞3か月で個人信用情報機関に登録される。機構は裁判所に「支払い督促」を申し立てる時期も延滞9か月に早めた。これは、強制執行のための前段手続きであり、その件数は07年度1件に対して5年後の12年度は326件と急増した。

 取り立てが厳しくなっているのには理由がある。奨学金事業が金融商品化しているからだ。

 例えば13年度の奨学金事業予算は2兆2154億円だが、政府支出は790億円にすぎない。この年の財源構成は民間資金70%、返還金26%、国4%だ。民間資金が流れ込むのは、債券の格付けがAAと高く投資対象としては安全資産だからだ。機構は、格付けを高くするために、借入金を利息付きで確実に返済するための原資が必要となり、政府資金がほとんどないために取り立てを強化する。

 機構の実態は、奨学生から取り立てた有利子奨学金の利息や延滞金を金融資本の利潤として差し出す装置となっている。
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