2021年12月31日・2022年1月7日 1705号

【森友裁判、国が「認諾」で幕引き/公文書改ざんの真相解明を妨害】

 学校法人森友学園への国有地売却をめぐり、財務省の決裁文書改ざんを強いられ自ら命を絶った同省近畿財務局職員の赤木俊夫さんの妻・雅子さんが国に損害賠償を求めた訴訟は、国側が態度を一転し、請求を受け入れる形で終結した。

 裁判上は原告の全面勝利である。だが、雅子さんは「夫はまた国に殺されてしまった」と悔しさをあらわにした。「お金を払えば済む問題じゃないです。私は夫がなぜ死んだのか、何で死ななければならないのか知りたい。そのための裁判でしたので、ふざけんなって思います」

 鈴木俊一財務相は「国の責任は明らかとの結論に至った以上、いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではない」と説明する。こんな詭弁をよく言えたものだ。雅子さんが資料(俊夫さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」など)の提出を求めても、国は出し渋ってきた。それこそ「いたずらに訴訟を長引かせ」てきたのである。

過去4件の奇策

 雅子さん側は訴訟で、当時の財務省幹部らを証人請求する方針だった。裁判が継続すれば、政府にとって都合の悪い証拠が出てくる可能性がある。だから、賠償請求を「認諾」することで裁判を強制終了させたことは見え見えだ。

 「請求の認諾」は民事訴訟法の規定で、被告が原告の請求を認めるもの。裁判所の調書に記載されると確定判決と同一の効力を有する。被告が請求を認諾してしまえば、裁判所が請求権の存否を判断する必要はなくなる。よって、裁判は終了というわけだ。原告がいくら求めても裁判が再開されることはない。控訴も上告もできない。

 国家賠償請求訴訟で国が請求を認諾するのは極めて異例で、過去4件しかない。直近の事例は日米合同委員会議事録の情報開示請求拒否をめぐる事案だった(2019年6月)。この時は裁判で詳細が明らかされることを恐れての措置だった。今回のケースも同じ理由からであろう。

 決裁文書改ざんの発端は、森友事件に関し「私や妻が関係していれば首相も国会議員も辞める」と全面否定した安倍晋三元首相の国会答弁とみられている。首相関与の証拠を消すための文書改ざん。いつ誰が命じたのか。どういうルートで現場に下りてきたのか。それらの事実を政府は闇に葬りたいのである。

安倍隠しに税金

 今回、政府は巨額の賠償金(約1億700万円)を払ってまで裁判を終わらせ、安倍元首相を守ろうとした。賠償金の原資は言うまでもなく税金である。きわめて不当な税の使われ方だ。

 岸田文雄首相は森友・公文書改ざん問題について、第三者による再調査の実施を否定している。雅子さんとの面会も事実上拒否した。「真摯に説明責任を果たしていく」は、例によって口先だけのことのようだ。

 おりしも、建設業の受注実態を表す国の基幹統計を国土交通省が書き換えていた問題が発覚した。国内総生産(GDP)をかさ上げするために算出データを改ざんした「アベノミクス偽装」である可能性が高い。

 森友事件ともども、岸田政権による真相隠しを許さず、安倍案件における国家犯罪の実態を明らかにしていかねばならない。

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