2021年12月31日・2022年1月7日 1705号

【遺骨土砂を基地建設に使うな/公害等調整委員会に要請/乱開発による環境破壊 止めよう】

 沖縄戦の悲惨を忘れまいと設けられた、戦跡としての性格を有する唯一の国定公園=沖縄戦跡国定公園の区域内、糸満市米須(こめす)の「魂魄(こんぱく)の塔」横で計画されている鉱山開発について沖縄県は21年5月、自然公園法に基づき、「遺骨の収集に支障が生じない」「慰霊碑の風景に影響を与えない」よう措置を講じることを命じた。これを不服として開発業者は8月、公害等調整委員会(総務省の外局)に取り消しの裁定を申請。12月16日、同委員会で第1回審理が行われた。

 審理に先立ち、遺骨収集ボランティア・ガマフヤー代表の具志堅隆松さん、平和をつくり出す宗教者ネットの武田隆雄さんらの連名で要請書を提出。「県の措置命令は戦跡公園としての『風景』を保護するための当然の対応だ」「南部では20か所以上の鉱山が操業し、産業廃棄物の不法投棄や土砂輸送トラックの騒音・振動、農作物の粉塵被害が発生。これ以上の開発は地域の環境面からも認められない」と指摘した。

 審理終了後の報告会で、沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんは「調整委の委員長は風景とは客観的に見えるものと言う。しかし、目に見えるだけではなく、戦争の記憶と結びついた『歴史の風景』もある。そういった解釈を委員会が受け入れるか、予断を許さない」とし、「もし措置命令無効の裁定がなされたら、沖縄県は戦跡公園内の鉱山開発を止めることができなくなる。調整委の決定は今後の南部土砂問題に決定的に重要な意義を持つ」と危機感をあらわにした。

 闘いの方向として「県知事の請求に基づいて鉱区禁止地域に指定」「遺骨が残る可能性のある緑地帯の開発を規制」「県内全域を対象とした土地の形質変更を規制する条例=戦争の記憶を残す条例の制定」などを提案。「遺骨問題がなくとも、こんな開発が許されるのか。業者がすべきは辺野古に土砂を出すどころか、掘削した無数の巨大な穴を埋め戻すことだ」と北上田さんは強調した。

遺骨混じり土砂使うな意見書 兵庫・西宮市 大阪・松原市でも

 全国自治体の12月議会でも「埋め立てに遺骨混じり土砂を使うな」の意見書採択が広がっている。12月16日、兵庫県西宮市議会では請願趣旨に「辺野古沿岸部の埋立て」を含む請願が全会一致で採択。17日には大阪府松原市議会でも請願が採択された。(詳報次号)

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