2022年1月14日 1706号

【「君が代不起立」再任用拒否 国家賠償裁判 全国の闘いを勇気づけた 梅原聡さん逆転勝利判決】

 大阪府立高校元教員・梅原聡さんは、再任用拒否国家賠償裁判控訴審で逆転勝利をかちとった。12月9日の大阪高裁判決「大阪府は、梅原聡さんに315万円を支払え」は、これまでの「君が代」不起立者に対する差別の存在を認め、許されないとしたものだ。

 大阪では、2011年以降、大阪維新の会が主導して制定した国旗国歌条例や「不起立3回で免職」を規定する職員基本条例の下で、60数人が減給・戒告の懲戒処分を受けた。また、「君が代起立・斉唱を含む上司の職務命令に従う」との意向確認ができなかったという理由で、梅原さんを含む10人近い教員が再任用を拒否された。

 これらの条例は、橋下徹府知事(当時)が公言したように「職務命令に従わず、国歌を起立・斉唱しない者は公務員にしておけない。辞めさせる」という狙いを持っていた。不起立者を学校から排除し、「ルール」の名で学校教育を支配し、歴史修正主義に染め上げるためだ。橋下は知人である中原徹を教育長とし「君が代」を歌っているかの「口元チェック」までやらせた。

 しかし、同様の「君が代」処分に抗する東京の闘いに連帯しその裁判闘争の到達点も活かした大阪の闘いは、手続き違反等で2人の処分を取り消させた。それに続き今回、「府教委の判断は裁量権の逸脱、濫用(らんよう)で違法」として損害賠償を命じ、不起立者への差別を許さない判決を手にした。維新府政の統制と教育支配を突き崩していく一歩として大きな意義を持つものだ。

 12月17日と27日、「日の丸・君が代」強制反対大阪ネットが呼びかけて「府教委は職をうばった責任をとれ!上告するな!」「上告を直ちに取り下げよ!」ビラの府教委前配布と宣伝、府教委要請行動が行われた。

 今、「不起立処分は戒告でも許されない」の判決獲得に向け、東京では第5次訴訟、大阪では「君が代」調教NO!松田幹雄さん裁判、「合理的配慮」無視の戒告処分取り消しを求める奥野泰孝さん裁判が闘われている。梅原さんの高裁判決は、これらの闘いを勇気づけるものであった。

おかしいことはおかしい$コあげるメッセージ 勝利判決を手にして

 法廷で裁判長が「…被控訴人は315万…を支払え」と読み上げたとき、正直、うれしいというよりホッとしました。地裁の判決は全くの不当判決でしたが、控訴審での訴訟指揮は一審を変更する判決を予想させるもので、私自身も支援の皆さんも期待する気持ちが膨らんでいたからです。

 判決は、思想・良心の自由を侵害したという点は認めませんでしたが、裁量権の逸脱・濫用を認めて、損害賠償を命じました。私たち「君が代」の強制に抵抗する者を排除してきたことが違法とされ、府教委が不起立処分者を差別的に扱ってきたことが明確になったわけです。この判決が得られたのは、これまでの運動の成果であり、ご支援いただいた皆さんと歓びを分かち合いたいと思います。

 今、教育現場は大阪維新府市政のトップダウン方式が徹底され、現場の先生は声をあげにくい状況になっています。高裁判決が学校に限らず、思いを抱えて苦しんでいる人たちに、「おかしいことにはおかしいと声をあげよう!」というメッセージとして伝わればうれしいと思います。

 府は早くも12月17日、府民の税金を使って上告することを決めました。不採用判定が合理性を欠くと断じられても何ら反省することなく、自分たちに誤りはないとあくまで主張する彼らの態度には憤りを覚えます。あきらめないで良かったと喜べる日まで頑張ります!

(「君が代不起立」再任用拒否 国家賠償裁判原告・大阪府立高校元教員 梅原聡)



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