2022年1月21日 1707号

【日米2プラス2/対中国軍事戦略を合意/先制攻撃ミサイル共同開発を正当化/沖縄・南西諸島を戦場化する軍事作戦】

 日米両政府の外務・防衛関係閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は1月7日、共同文書などに合意した。敵基地攻撃用超音速ミサイルの共同開発や南西諸島の自衛隊基地の共同使用など、日米軍事一体化をさらに加速させる内容だ。日本政府は、国家安全保障戦略など軍事戦略を書き換え、一気に先制攻撃能力の整備を行う。安倍政権下で強行された戦争法制。岸田政権下で米軍と共に戦争する侵略軍の実態づくりが公然と進められようとしている。

「唯一の戦略的競争相手」中国

 「同盟を絶えず現代化し共同の能力を強化する」。日米が合意した共同文書に記された「現代化」には、軍需産業と軍隊の共通の利益が込められている。「現代化」とは、「敵」を都合よく変えながら旧態の軍備を更新し、軍隊の再編を繰り返しながら存続をはかることに他ならない。

 米軍はアフガニスタン、イラクなど中東「介入」から中国との「敵対」に大きくシフトする過程にある。そんな米軍と「対中脅威」を前面に侵略能力を高めたい自衛隊が米軍との「共同の能力」を強化しようと、すでに進行中のプロセスを文書で確認し合ったのだ。

 バイデン政権は中国を「長期的な唯一の戦略的競争相手」と位置付けている(2021年3月「国家安全保障戦略」)。要するに、敵は中国だけということだ。インド太平洋司令官は中国の台湾侵攻の可能性を「6年以内だ」と煽った。

 日本政府もまた、米軍と足並みをそろえようと、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を年内に書き換える意向を表明している。そこには合意文書にある「敵基地攻撃能力を含めあらゆる選択肢」を具体化する。

 その一つが「極超音速ミサイル」の共同開発だ。中国がすでに実射実験を行っている。極超高速ミサイルは撃ち落とせないから発射される前に破壊する―こんな理屈で岸田政権は敵基地攻撃の正当化をはかろうとしている。結局は、敵よりも先に発射しなければならない事実は変わらない。

先行する日米軍事演習

 中国を「敵」とする日米軍事演習はすでに始まっている。ロイド・オースティン国防長官が「並外れた相互協力」と評価した「レゾリュート・ドラゴン21」。米海兵隊、陸上自衛隊あわせて約4千人が12月、北海道、東北で約2週間の訓練を行った。海兵隊の最新鋭兵器ハイマース(高機動ロケット砲システム)と陸自のSSM(地対艦誘導弾)で中国の艦船を足止めする作戦などが試された。

 合意文書には、「南西諸島を含めた地域における自衛隊の態勢強化の取り組みを含め、日米の施設の共同使用を増加させる」とある。要するに、南西諸島の自衛隊ミサイル群と海兵隊のハイマースが中国艦船を迎え撃つというのである。

 岸信夫防衛相は協議後の会見で、「具体的な取り組みも進展している」と述べながら、「答えは控える」と検討状況をごまかした。共同使用施設についても明らかにしなかった。



 だが、複数の日本政府関係者の証言として報道されている「共同作戦計画」によれば、「南西諸島にある二百弱の島のうち約40か所」が軍事拠点化の可能性があるとしている(12/23時事)。海兵隊は中国の反撃をかわすために、ハイマースを転送し攻撃拠点の島を変えながら攻撃を続け、自衛隊は弾薬、燃料の補給など後方支援を担うという。

 だが自衛隊は決して後方支援部隊ではない。固定化された自衛隊ミサイル基地がおとりとなり、海兵隊の機動的攻撃を援護する役割を担うことになるだろう。


軍隊は住民を守らない

 この作戦のベースになっているのが21年に始まる海兵隊再編(「フォースデザイン2030」)の動きだ。これまで海兵隊は、戦車を主力に強襲揚陸作戦に適した部隊編成がされてきた。それが、機動的な対艦ミサイル部隊を主力とする「海兵沿岸連隊」へと大転換がはかられている。

 これまでの対中国作戦は「エアー・シーバトル」。中国のミサイル射程圏外から中国本土のミサイル基地をたたくものだった。この作戦では海兵隊の出番がない。19年に海兵隊総司令官に就任したディビッド・バーガーは、中国のミサイルに耐えながら中国艦船の進行を阻止し、空母や爆撃機の来援を待つ時間稼ぎ役に活路を見出した。

 「遠征前方基地作戦(EABO)」と名付けられたこの作戦の検証をはじめて陸自と行ったのが「レゾリュート・ドラゴン21」だった。

 安倍政権が戦争法を強行成立させたのは、自衛隊が集団的自衛権を行使する法的根拠が必要だったからだ。「米軍の戦争に巻き込まれる」とは、その結果引き起こされる事態を懸念したものだった。

 今や目の前にその危機が迫っている。戦争法が「専守防衛」の制約を取り払った結果、中国の国内問題である「台湾有事」を口実に、何のためらいもなく軍事作戦を練っているのである。「敵基地攻撃能力を含めあらゆる選択肢」と先制攻撃能力の強化を隠すこともしない。



  *  *  *

 海兵隊との共同作戦が報道されると、攻撃拠点とされる離島がある鹿児島、沖縄両県の市民からは怒りの声が上がった。遺骨収集を続ける「ガマフヤー」代表具志堅隆松さんは「私たちはまた戦争の矢面に立たされ、犠牲者になるのではないか」(12/24琉球新報)。「わたしたちの島々を戦場にさせない県民の会」(仮称)結成を準備する沖縄平和運動センター顧問・山城博治さんは「軍隊は住民を守らない。沖縄戦の再来を語る暴挙」と非難。自衛隊幹部は「住民を守る余裕はない」と公言しているのだ。

 2プラス2の合意文書には、「米軍普天間飛行場の継続使用を回避するための唯一の解決策である名護市辺野古移設」と、またも書き込んでいる。しかし、完成は不可能だ。海兵隊の再編はあと5年以内に完了する。辺野古新基地は存在しないことを前提にしている。

 「辺野古は唯一の解決策」ではなく、最悪の選択肢だった。自然破壊を進める工事を直ちにやめろ、住民を戦闘に巻き込む軍事作戦をやめろと声をあげる時だ。
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