2022年1月21日 1707号

【首切り自由の「解雇の金銭解決制度」 導入加速は許さない】

 岸田政権は「新しい資本主義実現会議」緊急提言に「産業構造の変化に伴う労働移動の円滑化を図る」と明記した。首切り自由への「解雇の金銭解決制度」導入加速を許してはならない。

労働移動円滑化の名で

 2018年6月、厚生労働省内に設置された「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長は山川隆一東京大学大学院教授、以下「論点検討会」)は、現在まで計15回開催され、いわゆる「解雇の金銭解決制度」について議論の取りまとめの段階に入っている。

 コロナ禍で解雇の嵐が吹き荒れる中、さらに資本による労働者の解雇自由に道を開く「解雇の金銭解決制度」に反対の声をあげなければならない。

 この解雇の金銭解決ルールを論議した厚労省労働政策審議会では、労使対立が激しく結論が出ず、「法的論点整理」に限って労働法学者らによって構成される論点研究会に委ねられた。

 ところが、論点検討会では、あたかも制度導入が前提のような議論が続けられてきた。さらには、政府が2021年6月に公表した「成長戦略フォローアップ」では、「労働移動の円滑化」の項目で「解雇無効時の金銭救済制度について、2021年度中をめどに法技術的な論点についての専門的な検討の取りまとめを行い、その結果も踏まえて、労働政策審議会の最終的な結論を得て、所要の制度的措置を講ずる」とされた。

 つまり2022年3月までに、論点検討会議論の取りまとめが行われ、それをそのまま労働政策審議会に法案として提出するのが政府の狙いだ。岸田「新しい資本主義」緊急提言の「労働移動の円滑化」もこの流れの中にある。

職場復帰こそ権利だ

 現在のところ論点検討会では、労働者側のみが行使できる、労働契約を金銭の支払いで終了させることを目的とする権利の法制化を念頭に、法的論点の整理を行っているとされる。しかし、制定以降とめどない改悪が続いた労働者派遣法同様、いったん法律が成立すれば、経営側は金銭解決の「使用者申し立て権」を要求してくるに違いない。

 解雇について金銭の支払いにより労働契約を終了させて解決することは、民事訴訟制度の和解手続きや労働審判制度の調停・審判手続きとして実際に行われている。今新たな制度を導入する必要は全くない。

 解決金の算定式をあらかじめ法定化することは、現在進められている解雇争議の解決にも大きな制約を科すことになる。また、不当解雇でも低額の金銭解決で済む、と経営側のリストラ攻撃はさらに強まる。

 2008年施行の労働契約法には「(第16条)解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする」の条文が盛り込まれた。無効な解雇は直ちに職場復帰できることこそ、権利として確立しなければならない。

 解雇の金銭解決制度の法案化を許さない闘いを広げよう。 
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