2022年1月21日 1707号

【未来への責任(339) ノー!ハプサ訴訟 2年ぶり再開】

 日本による植民地支配下に軍人・軍属として強制動員され死亡した韓国人が、戦後、遺族に無断で「英霊」として靖国神社に合祀(ごうし)されていた。この合祀の取り消しを求める韓国人遺族の裁判(ノー!ハプサ訴訟)。第2次訴訟控訴審の第2回口頭弁論が約2年ぶりに12月16日に開かれた。

 一昨年1月20日、第1回口頭弁論で原告が意見陳述を行い、控訴審の闘いの火蓋(ひぶた)が切って落とされたが、新型コロナウイルス感染症の拡大で2度の延期の末、裁判期日は取り消しとなった。今回も原告の来日はかなわなかったが、何とか韓国の遺族の皆さんと一緒に裁判を迎えたいとオンライン集会を準備し、支援者に傍聴参加を呼びかけてきた。どのくらい参加してくださるか不安であったが、裁判所が定員の半分の傍聴しか認めない中で、それを上回る50人以上の傍聴希望者が法廷に集まり抽選となった。

 裁判官3人のうち1人が交代したため、弁論更新手続きが行われた。原告側弁護団は認否も反論もしない日本政府・靖国神社とそれを容認する裁判所を厳しく批判する更新意見を述べた。また、政教分離を定めた憲法20条に基づき、「長期で大規模で組織的」な「国と靖国神社の癒着」と言って良い合祀の実態を改めて明らかにする準備書面3を提出した。裁判所の訴訟指揮を厳しく追及する原告側弁護団に対して、靖国神社側代理人が突然立ち上がり、「裁判所に失礼だ!」と声を荒げるシーンも。これには傍聴席からも「よく言えたもんだ」「逃げるな」の声が上がった。日本政府・靖国神社・裁判所の癒着構造が浮き彫りになった。

 オンラインで韓国とつないで報告集会を開催した。2年ぶりに顔を見て言葉を交わすことができ、感慨深いものがあった。太平洋戦争被害者補償推進協議会共同代表の李熙子(イ・ヒジャ)さんは「靖国から父の名前の取り消しを求めることは、戦争をしてはならない、未来の平和のために生きている者としてやるべきことだと思う」と強調した。一方、原告の李明九(イ・ミョング)さんは「私が来年まで生きているかわからないが、生きているうちに取り消してほしい」と訴えた。遺族も高齢化し、解決に残された時間は少ないという現実も突きつけられた。

 裁判は原告側が証人申請を行い、事実審理に入れるかどうかが焦点となっている。次回は3月1日、くしくも「三・一独立運動」記念日だ。今回を上回る傍聴支援の力で必ず証人尋問を実現したい。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会・山本直好)

 
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