2022年1月21日 1707号

【〈徹底検証〉住民・市民を監視する土地規制法/馬奈木厳太郎ほか著/かもがわ出版 1210円(本体1100円)/どこから切っても憲法違反】

 政府は昨年6月、わずか20時間余りの審議で土地規制法を成立させた。自衛隊や米軍の土地と建物を守るために周囲の土地取引を規制することを定めたものだ。筆者は「どこから切っても憲法違反というべき法律」と断じ、この土地規制法の問題点を端的に示す。本書は、法の廃止に向けた取り組みのために出版された。

 外国人や外国資本が該当の土地を所有すると安全保障上の問題が発生するという。もっともらしく聞こえるものだが、現状はどうか。防衛省は昨年2月、衆院予算委員会で「現時点で、防衛施設周辺の土地の所有によって自衛隊の運用等に支障が起きているということは確認をされていない」と答弁した。その後の審議でも同様の答弁であり、問題となる事実はないのだ。

 法整備をするには立法事実がなければならない。防衛省の答弁が立法事実なしを明らかにしているのに安全保障を盾に立法を急いだ。これだけでも大問題である。

 さらに、内容がとんでもないものとなっている。その一つに土地規制法23条がある。土地所有者の意思に関係なく国が買い取ることを可能にしかねず、事実上の土地収用に道を開く。住民を監視し、市民生活を脅かす悪法にもかかわらず、内容があまりにも知られていないのも事実だ。

 だが、法が制定されておしまいではない、と筆者は強調する。全面施行は今年9月の予定で、その過程で自治体・事業者にもさまざまな問題がかかわってくる。全国の自治体議員も立ち上がっている。沖縄・北谷(ちゃたん)町議会は廃止を求める意見書を採択した。各地の報告は、法の発動を許さず、廃止をめざす闘いのスタートを伝えている。 (I)
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