2022年1月28日 1708号

【「防衛力」強化加速パッケージ/補正・当初予算一体で派兵体制強化】

 岸田政権は「防衛力強化加速パッケージ」と称して、2021年度補正予算と22年度当初予算一体の大軍拡予算を編成する。年明け早々の日米豪印「クワッド」軍事同盟による対中国封じ込めの一環だ。軍事費削減、予算を命と暮らしに回させる運動の強化が必要だ。

 岸田政権下で初めての当初予算編成だ。軍事費は第二次安倍内閣で増に転じた13年度当初予算以来10年連続での増となった。しかも、前年度補正予算と併せた「15か月予算」では対前年度比7・6%増と突出した伸び率となった(図1)。高額兵器の爆買い、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)・米軍再編経費増、「思いやり予算増」が原因だ。「思いやり予算」は日本政府が「思いやりの心」で負担してきた米軍駐留経費だ。今後5年間の総額は、過去5年間より1086億円増の1兆551億円に上る。この中には米軍の訓練資材購入費(5年間で200億円)が新たに追加されている。


安倍をしのぐ大軍拡予算

 防衛省は「防衛力強化加速パッケージ」について、「我が国周辺の安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、必要な防衛力を大幅に強化する」と22年度予定事業を21年度に前倒しし、「(令和)3年度補正において、歳出予算は過去最大となる7738億円、新規後年度負担は928億円を計上」(21年11月)とした。そして、21年度補正予算を含めた「16か月予算」として編成した。

 調達するのは、集団的自衛権行使を容認した安倍政権以降続く高額兵器だ。

 目を引くのはステルス戦闘機F―35で、垂直離着陸できるB型の購入。これを搭載するため軽空母「いずも」を改修し、敵基地攻撃能力保有の既成事実化する(図2―(1))。そして、「米軍再編後」の自衛隊出撃基地化を視野に入れた辺野古新基地建設に補正予算だけで801億円を投入する(同(2))。




 同(3)で構成品取得が計上されている電波情報収集機(RC―2)は、18年策定の防衛大綱で「新領域」として位置づけられた宇宙・サイバー・電磁波領域のうち、電磁波領域での情報戦兵器だ。20年度〜22年度各1機購入が目論まれている。

 同(4)の次期戦闘機研究開発費は国産戦闘機製造を目指すもの。12式地対艦誘導弾能力向上は、日本版巡航ミサイル開発で、敵基地攻撃能力保持にもつながる。これらへの研究開発契約は20年度から急速に研究開発費中の比重を増やしている(図3)。軍需産業の保護育成とともに兵器市場への参入もたくらむ。



 防衛省は「防衛力強化加速パッケージ」での主要装備品全数確保を誇示する(図4)。その中には、多用途ヘリコプターなど21年度補正で獲得したものが散見される。そもそも補正予算は、当該年度の当初予算で見通せなかった火急の事態に対処するための制度だ。そのような費用を中期防の期間中に調達するつもりの武器購入に充てること自体が間違っている。いの一番に新型コロナ対策に回すべき原資だ。


海外派兵と死の商人

 敵基地攻撃能力強化は「国益」=グローバル資本の権益確保のための海外派兵の準備に他ならない。日米豪印「クワッド」を軸としたアジア太平洋地域での対中国包囲網も、つまるところ、グローバル資本主義諸国と中国による「国益」のための覇権争いだ。

 安倍・菅政権に輪をかけた岸田政権の大軍拡は、日本が世界の平和と安全の脅威となり、「死の商人」にすらなり得る道を突き進むものだ。

 在日米軍基地は、事件事故を引き起こし、有害物質を市民の生活圏に垂れ流すばかりか、新型コロナ禍ではウイルスの感染源となっている危険・迷惑施設だ。だが日本政府は、その米軍の駐留経費・訓練費用まで日米同盟強化として負担する。

 軍事費を削り市民の命と暮らしに軍事予算を回す。これがあるべき姿だ。
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