2022年1月28日 1708号

【ミリタリーウォッチング 馬毛島 突然の基地整備予算計上 戦争訓練でなく平和の島へ】

 昨年末の12月24日、防衛省は突然、馬毛島(まげしま)(鹿児島県西之表(にしのおもて)市)への「米軍訓練移転」と「自衛隊基地整備計画」に関する3000億円の整備費を2022年度予算案に計上したと地元に伝えてきた。

 そもそもこの計画には同意していない自治体もある。政府は馬毛島の計画については、これまで「決定ではない」と言ってきたにもかかわらず、今回「政府として計画を決定した」などと強引に基地化・軍事化を進める態度に出てきた。背景には、中国を念頭にした「防衛力」強化、5兆3687億円という過去最大の軍事費計上がある。

 馬毛島は、琉球弧の入り口にあたる種子島から約12`西にあり、東西2・7`、南北4・5`、817ヘクタール。「無人島」としては日本で第2の面積を持つ。ここを、在日米軍艦載機の離発着訓練の場にし、陸海空自衛隊も各種の訓練、活動を行う「日米統合軍事基地」にするのがねらいだ。

 米軍艦載機の訓練―かつては「NLP」、今日では「FCLP」と言われるが、艦載機が空母から飛び立ったり(離艦)、帰ってきたり(着艦)する際のパイロットの技能維持のため、陸上の滑走路を空母の甲板に見立てて「タッチ&ゴー」(着陸直後に再び離陸する連続離着陸訓練)を行う。この訓練は車輪が接地すると同時に離陸のためにエンジン全開で飛び立つので、殺人的な轟音を伴う。

 これを年間に1〜2回、5月と8月に10日間連続で日中から午前3時頃まで繰り返す。約60機が入れ替わりで実施し、離着陸回数は10日間で実に2000〜3000回と言われている。このすさまじい騒音が近くの人が住む島に響かないことなどありえない。

米軍と全自衛隊が利用

 しかも今後、馬毛島に持ち込まれるのは米軍の艦載機だけではない。20年8月、防衛省は「馬毛島における施設整備」と題する文書を地元に示した。そこには、南北に広大な南西地域の島嶼(とうしょ)部において「陸海空自衛隊が訓練・活動を行い得る施設」「整備補給等後方支援における活動を行ない得る施設」もあげられている。空自はF35、F15、F2などの戦闘機が馬毛島でFCLPを実施し、海自は水陸両用訓練を、陸自はヘリからの投下訓練なども行うことが明記されている。

 今、私たちは、このような軍拡をめざす馬毛島ではなく、平和と命と生活を大切にする馬毛島をともに創る必要がある。そんな希望と力を持ちたいと思う。

 藤田 なぎ
 平和と生活をむすぶ会

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