2022年1月28日 1708号

【時代はいま社会主義へ 第14回 帝国主義論(1) 日本は帝国主義国である】

 これから数回にわたって解説を加えるのは、ロシア革命の指導者であったレーニンが1917年に公刊した『帝国主義論』です。この著作は、21世紀の現代資本主義のあり方を捉えるうえで、いまなお重要な著作であり続けています。

 この著作においてレーニンは、帝国主義を次のように定義しています。

 「帝国主義とは、(1)独占体と(2)金融資本との支配が形成され、(3)資本の輸出が卓越した意義を獲得し、(4)国際トラスト〔国際的な独占体〕による世界の分割がはじまり、そして(5)最大の資本主義諸国による地球の全領土の分割〔植民地の分割〕が完了した、そういう発展段階の資本主義である」((1)〜(5)の番号と〔 〕内の挿入は引用者による)。

 上の定義は帝国主義を特徴づける5つの指標を含んでいますが、それらのうちで最も基礎的な指標は、(1)の独占資本主義の成立です。そのことは、「帝国主義のできるかぎり簡単な定義をあたえなければならないとすると、帝国主義とは資本主義の独占的段階であると言うべきであろう」というレーニンの言葉によっても裏づけられます。少数の独占的大企業によって市場が占拠されている状態こそが、豊富な利潤を生んでくれる有利な投資先をもはや見いだせない「資本の過剰」を産み出し、その「資本の過剰」を解消するために資本の投下先を海外に求めようとする19世紀末以降の植民地支配と帝国主義とを成立させたのでした。

 ところで、この連載の第8回では、資本主義は19世紀の終わりに従来の自由競争段階から独占段階へと移行し、それにともなって帝国主義が成立したと述べておきました。そして第9回では、21世紀の資本主義をグローバルな資本主義と規定しました。そうした論述はしかし、今日の資本主義の諸大国が、帝国主義であることをやめてグローバルな資本主義になったということを意味してはいません。なぜなら、今日の資本主義大国が独占資本主義の段階にあることに変わりはないのであり、したがって「資本の過剰」とそれを解消しようとする独占資本の策動は、現代においても不断に生じてくるからです。今日の資本主義は、多国籍独占資本(グローバル資本)が国境を越えて投資を行い、世界のすべての生活領域を商品市場として再編成しようとしているグローバルな資本主義であるのですが、この資本主義の内部では同時に、資本主義大国が商品の輸出先や資本の投下先をめぐって争い合う帝国主義の論理が作用し続けています。

 日本も例外ではありません。日本の帝国主義は、第2次世界大戦後の米国の占領統治下における財閥解体等によりいったんは壊滅状態に置かれましたが、朝鮮戦争の「特需」をきっかけにしながら、その後の対米輸出の急増により復活を遂げていきました。朝鮮戦争をきっかけにし「警察予備隊」を経て誕生した自衛隊は、核兵器を除く通常兵器の水準で見るなら、今や世界4位の軍事力を持つとも言われています。イギリスやドイツやイタリアと同様に国内に多くの米軍基地を抱えているとはいえ、日本はそれらの欧州諸国と同じく自立した帝国主義国であるのです。

 それと同時に、帝国主義の現象形態は今日ではもはや、植民地支配や侵略戦争といった軍事的形態で表出されるとは限らないという点を認識しておく必要があります。実は新自由主義もまた、帝国主義の1つの現われなのです。次回はこの点をお話しします。   《続く》
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