2022年02月04日 1709号

【ギャンブル大国日本/依存症すでに数百万人/対策なしでさらにカジノ開帳】

 大阪カジノに「維新の会」吉村洋文知事、松井一郎市長はとてつもない期待を寄せる。年間1600万人来場、売り上げは4千億円―海外富裕層から巻き上げる算段とか。だが、カジノに通う中心は富裕層とは限らない。

 予定されている入場料は6000円。裕福でもない日本人客をあてにしているのは明らかだ。結果、ギャンブル依存症が増加し、その対策に自治体が取り組まなければならなくなる。維新の話には、そんな負の部分がすっぽりと抜け落ちている。

 実のところ、カジノがなくても日本はすでにギャンブル大国。依存症の割合が他国に比べ高い。ドイツ0・2%(2009年調査)、フランス1・2%(11年)などに対し日本は3・6%(17年)。数百万人になる勘定だ。これはラスベガスのある米国ネバダ州3・5%(02年)に匹敵する率だ。いわば日本中がラスベガス状態といえる。

 なぜこれほど高率なのか。それはパチンコホールによるものだ。パチンコは日本では行政上「遊戯」とされているが、スロット・マシンなどと同じ「電子的ゲーム機械(EGM)」。国際的な基準ではりっぱなギャンブルとなる。世界のEGMの6割を占めるパチンコ台(16年)。日本では28人に1台の割合。ネバダ州の17人に1台に迫る多さだ。

 カジノと言えば、ルーレットやカードなどテーブルゲームが思い浮かぶが、収益の85%はEGMが稼いでいるという(『ビッグイシュー』18年10月号)。そして、依存症になりやすいのもEGMなのだ。

 カジノ開帳はあらたな大型パチンコホールを作るようなもの。そして、ギャンブル依存症患者をさらに生み出していくことは間違いない。

救済・支援こそ急務

 18年に「特定複合観光施設区域整備法(カジノ法)」とともに制定された「ギャンブル等依存症対策基本法」。自治体は「その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」(第6条)ことになっている。

 大阪府・大阪市IR推進局がまとめた「ギャンブル等依存症への取組」(18年)では、「日本人等の入場回数を7日間で3回、28日間で10回に制限し、マイナンバーカードで確認する」などとしている。だが、来場者を依存症と見極めることは容易ではない。まして事業者(博打の胴元)に依存症患者の排除を求める仕組みが機能するとは思えない。

 この法律はカジノに備えるためのものではない。すでに依存症に悩む本人や家族をどう救うのかが、今問われているのだ。「相談・治療・回復支援について切れめのない体制」を整備するとする大阪府。窓口となる相談拠点には保健所が位置づけられている。

 保健所や医療体制を切り捨ててきた維新が充分な体制を整えるはずがない。まずはカジノ自体をやめ、患者をこれ以上増やさないことだ。
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