2022年02月04日 1709号

【明日をつくるなかまユニオン<第4回>/泣き寝入りせずに声を上げ、勝ち取った和解/「なか卯」非正規労働者の不当解雇争議】

 1月23日、兵庫県尼崎市で「『なか卯』争議勝利和解!報告集会」が約20人の参加で行われた。

 ファーストフードチェーンの「なか卯」で5年以上も常勤アルバイトとして働いてきたAさんを、会社が契約期間途中に不当解雇した争議が解決したことを、労働組合と地域の仲間が祝って催したもの。

強いられる奴隷労働

 なかまユニオン阪神分会の組合員は、「なか卯」の労働現場の実態を寸劇で暴いた。

 店は24時間営業で勤務時間帯は、8時から17時の昼帯、16時から23時の夜帯、22時から8時までの深夜帯に分かれる。Aさんは深夜帯の勤務で、2019年以降は4時半までの勤務に短縮。20年4月からは週3日のシフトとなり、給料は大きく減額となった。しかも、「深夜帯の客は相当少ない」という理由で、勤務時間の中で2時間30分の休憩を取るように決められている。7時間30分の拘束だが、労働時間は5時間で給料も減らされる。

 業務内容は、ホール(客対応)とキッチン(調理・準備)が主で、昼帯と夜帯は2人ずつの4人体制。深夜帯は各1人の2人体制だ。1人が休憩中の時に、酔客が問題行動を起こした場合は、本部(東京)に緊急連絡することになっているが、「それぐらい自分で判断してください」「勝手な対応はしないこと」と的確な対応はほとんどない。

働き続けられる職場に

 窮状に耐えかねたAさんが20年9月22日、「ワンオペ(深夜の一人作業)をなくしてほしい」「引継ぎの混乱を深夜帯の責任にしないでほしい」「冷蔵庫がカラで翌日の準備ができない」と業務の改善を訴えたところ、9月末からのシフトが外され、地域統括マネージャー(正社員)がAさんに「仕事をしなくてよい」と口頭で通知。

 10月1日の1回目の面談では、店長の指示に従うこと、会社の信用を損なう言動や風紀を乱す行為をしないこと等を誓約させる「指導書」へのサインをAさんが躊躇(ちゅうちょ)したところ、10月のシフトを全部外された。

 このままでは働けなくなると思ったAさんは、2回目の面談で「指導書」にサインする旨を申し出たが、会社は「自主退職」に追い込むために暴言を浴びせて罵倒した。

 10月30日の3回目の面談で、契約社員の就業規則を適用するからと「解雇通告書」が渡され、「退職合意書」への押印が迫られた。

Aさんと労働組合の勝利

 解雇されたAさんは同年11月になかまユニオンへ加入。誠実な団体交渉が行われなかったため、21年4月に大阪地裁へ提訴。11月26日に勝利的な和解で解決となった。

 和解の内容は、なか卯が「遺憾の意」を表明し、解雇を撤回して会社都合退職とし、解決金を支払うことを約束し「口外禁止条項」も和解金額にしかつかなかった。和解の場には、Aさんの求めに応じて、解雇を言い渡した管理職も同席した。

 裁判の代理人であった中井雅人弁護士は「何よりも、本人が立ち上がったことが大きい。でも、裁判だけで勝利に至ることは難しかったと思います。裁判のたびの入りきれないほどの傍聴参加。そして当該のお店の前での10月の街頭宣伝行動。これらの重なりで勝ち取った、よい和解だったと思います」と評価する。

 Aさんの勝利であるととともに、なかまユニオンの勝利だった。

闘いは引き継がれていく

 Aさんは「新しい職場で、穏やかに働けています」と近況を元気に報告。「復職には到らなかったけれど、会社側に非を認めさせ、解決金をもらう形で終われた。引かずに闘って良かったと思う。もしも、なか卯の別の労働者が、なかまユニオンへ労働相談に来たら、喜んで同席させてもらいます。また、ワツコや東リの問題は解決していないので、そちらへの支援もできる限りやっていきたい」と明るく決意を語った。

 非正規労働者が、理不尽な解雇に追い込まれているが、泣き寝入りせずに声を上げることで変えていける。なかまユニオンが示す争議の実例が、闘いの展望となって広がっていく。



 
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