2022年02月11日 1710号

【新型コロナ/5類感染症への格下げ要求は間違い/オミクロンが最後とは限らない/臨時施設を、医療拡充・増員を 原則的感染症対策こそ】

爆発的感染拡大

 新型コロナウイルス感染症の急拡大が止まらない。オミクロン株が原因だ。

 米軍基地からの「滲(にじ)みだし」が原因の沖縄県に始まり、新規陽性者数は過去最大をはるかに上回り2月2日には全国で1日約9万5千人。東京都が2万人を超えたのをはじめ、人口100万人あたりの新型コロナ感染死が最も多い大阪府でも1万人超など、またもや激増している。







 すでに医療供給態勢はひっ迫している。

 一般病床の新型コロナ病床への転換で一般患者の入院が制限され、救急患者の受け入れ困難が始まっている。また、医療従事者の不足も顕在化している。第4波、第5波のときは、一般患者の数倍の人手を要する中等症・重症患者の治療で医療従事者が不足した。だが、第6波は、家庭内感染により医療従事者が感染者や濃厚接触者となり従事できない、保育・教育機関の休園・休校による子の監護のために親である医療従事者が出勤できない―などが主な原因だ。

非科学の極み 維新・小池

 昨春の第4波、夏の第5波で、東京・大阪は「医療崩壊」ともいうべき事態を経験し、多くの在宅死を出した。だが、小池都知事、吉村大阪府知事、松井大阪市長らは第6波への備えを怠ったことには知らぬ顔を決め込み、「オミクロン株の特性に応じた対策を」(吉村知事)や感染症法上の分類を「2類相当」から「5類」に引き下げることを国に要求する始末だ。「病床や宿泊療養施設の確保」(小池知事)「インフルエンザと比べ命に大きく関わる症状ではない」(松井市長)ことをその理由に挙げているが、これは責任転嫁だ。

 まず、感染症対策は保健所を設置する都道府県知事・市長の責任だ。感染病床確保を含む所管する地域の医療計画も都道府県知事の権限だ。コロナ対応の専用医療施設新設も第4波の経験から国も財政支援を決定してきた。あとは知事・市長の決断次第だったが、小池も吉村・松井もオリンピック、万博・IR(統合型リゾート)にかまけて、小手先の酸素ステーション程度の施設を申し訳程度に設置するにとどめた。保健所機能も他部署からの人員かき集めに過ぎず、第6波であっという間に破綻した。

 やるべきことをしなかったばかりか、新型コロナ感染症の「5類」降格という最もしてはならないことを要求している。

 松井は、オミクロン株の重症化率が低いとしてこれを主張している。だが、重症化率は、厚生労働省専門家評価でも「重症化のリスクが低い可能性が示唆されているが、オミクロン株感染による入院例が既に増加している地域もある」(1/26アドバイザリーボード)とされる。仮に、低いとしても、感染者数が激増すれば重症者の絶対数が増える。すでに、その兆候がある。また、デルタ株も混在しており、発症者へは慎重な医療的措置が必要だ。

 なにより、「5類」に引き下げられるのは、オミクロン株感染症≠ナはなく新型コロナウイルス感染症≠セ。変異株はウイルス増殖過程での遺伝子情報のミスコピーに由来する。感染者が増えれば増えるほど変異株の出現確率も上がる。オミクロン株をやり過ごしても、次なる変異株が伝染性も毒性も強い≠烽フである可能性は否定できない。

 ウイルスはヒトの都合を推し量りはしない。経済活動を最優先し、無料検査や補助をなくして対策費用を削減したいという為政者の願望による非科学的な2類から5類への格下げは、行うべきではない。

医療供給態勢拡充が先だ

 では必要な対策は何か。

 政府がオミクロン株対策として取っている「軽症者は在宅健康観察」方針の下で、「自宅療養者」は26万4859人、「入院・宿泊療養調整中」は10万9057人(1/26段階、厚生労働省発表)に上っている。

 政府方針は、家庭内感染を助長し、家庭を感染拡大の防波堤とする棄民政策だ。同時に、医療従事者が努力してきた院内感染防止・医療供給態勢維持を無に帰するものだ。

 直ちに臨時医療施設を新増設し感染者を隔離保護する原則に立ち戻らなければならない。

 医療従事者不足については、当面潜在看護師が医療現場に復帰できるだけの労働条件の改善と再教育の機会の保障で改善できる。併せて看護師養成を強化しなければならない。

 医師不足は一朝一夕には解決できない。遅きに失したとはいえ、総医療費抑制政策に基づく医学部定員削減を定員増に直ちに転換しなければならない。医師、看護師をはじめ臨床検査技師、臨床工学士など医療従事者養成のための財政支出を拡大し、高等教育の漸進(ぜんしん)的無償化への先行例とすべきだ。

 公衆衛生を担う保健所機能、とりわけ保健師の増員も急務だ。保健師資格は、看護師資格を取った上でさらに1年以上の教育を受けることが必要だ。保健師は医療・介護・地域保健機関への従事と企業での労働安全衛生への従事の道がある。

 前者の業務、とりわけ、新型コロナ感染症対策の現場は過酷だ。ところが、繰り返し保健所機能が崩壊した大阪府・市では、維新の「身を切る改革」の名で職員の給与水準は大きく引き下げられ47都道府県のワースト3。これでは、人は集まらない。過酷な業務に見合った保健師の待遇改善は必須だ。

 第6波で国は無料PCR検査を拡大した。だが、検査態勢は整っていない。地方衛生研究所、保健所、医療機関、公的研究機関での検体採取態勢の拡充、検査技術の進展に応じた検査機器の充実で、必要な検査を必要な時に実施できる態勢を確立しなければならない。

 感染症対策は、オミクロン対策で終わるわけでも新型コロナ対策で終わるわけでもない。

 これら原則的な感染症対策を直ちに政府、自治体に要求しなければならない。



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