2022年02月11日 1710号

【みるよむ(607)2022年1月29日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラク社会の軍事化 徴兵制の復活法案も】

 イラクでは宗派の私兵とそれに癒着する政府による社会の軍事化が進んでいる。徴兵制の再導入さえ狙われている。2021年10月、サナテレビは、その実態と問題点を明らかにした。

 日本では、現在のイラクの社会状況はどのようにとらえられているだろうか?

 2003年のイラク戦争と占領から18年近くたち、表面的には「近代的」な政府や議会が存在している。

 ところが、今回の映像のように、軍事化がどんどん進行し、内務省(武装した警察部隊を多数保持している)と軍隊の人員だけでも70万人に上る。それだけではない。政府と癒着しながら、宗派の私兵が勢力を誇示するために示威行進を行い、都市の主要な通りで検問所まで設けている。

 スンニ派の一派ISIS(いわゆる「イスラム国」)が政府軍の武器を奪い暴力支配を続けたのに対抗し、シーア派の指導者シスターニはISISと戦うことを口実に「志願兵」という名の私兵を募集した。

 こうした状態の下、多民族、多宗教、多宗派のイラクでは、対立が起こった時に、法律や裁判による解決ではなく、暴力、軍事力を行使し相手を攻撃することで自らの利権を確保することが横行しているのだ。

利用される政府軍

 イラク議会では徴兵制を復活させる法案が提出された。政府軍もまた、イスラム政治勢力が支配する政党と政府に利用される存在だ。国内の軍事的対立が激化するのは目に見えている。

 軍事化は、石油利権などの確保のために、宗派私兵と政府が結びつき推進されている。それは、大量失業と社会サービス欠如に対する市民の怒りを抑え込むことに利用されている。サナテレビはこの社会の軍事化に反対しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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