2022年02月18日 1711号

【大津をともにつくる会 学習・意見交流会開催/みんなで考えた「今 市政に望むこと」】

 「平和と市民自治のまち大津をともにつくる会(代表中川てつや)」が2月6日、大津市内で学習・意見交流会を開いた。小雪がちらつく天候の中でも、熱心な市民が集まった。

 これまで「つくる会」はコロナ対策の拡充を求める市長あての緊急署名を集めてきたが、今回、要求項目を医療、教育などに広げた「子どもや子育て世代、高齢者に優しい大津市をつくる要請署名」に取り組む。その要請項目について理解を深めようと集った。

生活支援策を議論

 中川てつや代表は「子どもの貧困や高齢者医療など、コロナ以前から課題だった。コロナによって、一層切実になった。生活の下支えができる大津市にしたい」と思いを述べ、5つの要請項目について議論を促した。

 まず、学校給食の無償化だ。大津市では保護者の負担額は年間、小学生一人あたり約4万9千円、中学生では約5万9千円になる。完全無償化には14億円強の予算が必要だ。レポートを受け持った会員は、給食費が払えず給食を止められた児童がいる他都市の事例を紹介し「学校給食無償化は子どもたちに生きづらさを感じさせない地域づくりにつながる」と述べた。

 2つ目は中学卒業時までの医療費無料化。大津市では小学生について一部助成がされている。これを中学生まで完全無償を求める。担当した報告者は約1万人の中学生を対象としても1億円程度の予算で済むと試算。「わずかな予算で家計には大きな助けになる」と効果を述べた。

コロナ禍の影響

 3つ目は市独自の大学生向け給付型奨学金の創設。コロナ関連で大学を退学・休学した学生は全国で5千人を超える。バイト収入の減少など経済的理由で学業を断念せざるを得ない状況をなくそうと項目に上がった。神奈川県藤沢市の給付型奨学金の事例が紹介された。このケースでは必要予算は千数百万円。「すぐにでもできる」と納得。

 参加者から「体をこわした学生が生活保護を申請しようとすれば大学をやめなければならない。大学を続けるには無理してバイトという究極の選択を迫られる」との事例が示され、神奈川県横須賀市が来年度から実施する生活保護と同程度の支援制度が紹介された。

 4つ目は高齢者医療費自己負担分の補助制度創設。5つ目は市内交通機関の高齢者交通費補助制度。この項目は報告者が身をもって感じたことだ。配偶者のがん治療のために通院に10万円以上を費やした。高額療養費制度で窓口支払の限度額はあったとしても、交通費は助成の対象とならない。年金生活のなか、安心して治療も受けられない高齢者の切実な訴えだ。

市民が調べ行動へ

 この5つの項目とは別に、「つくる会」では、独立行政法人化(独法化)された市民病院を大津市直営に戻す要請署名も集めている。意見交流の場で、この要求には異論も出た。

 市の財政状況について詳細なレポートをまとめた報告者は「独法化が必ずしも悪いとは思えない」。職員採用の自由度や意思決定の迅速化などの効果を認める法人が多くあったとする資料が示された。財政の資料からは、独法化され2017年、市の支出は大幅に減ったが、その後、市直営時代の支出額に戻りつつある。逆に見れば、独法化しても市の負担を大きく減らすことはできなかったということがわかる。

 独法化など民営化の問題は、弊害を実態をもって示すことが必要だ。その意味でも、市民が自らの手で財政状況や制度の実態を調べあげたことは、新たな発見や要求の根拠を確かめる重要な機会となった。

 中川さんは「これらの施策は本来、国が制度化すべきものであるにもかかわらず、できていない。だから自治体が補っているし、補わせる必要がある」とまとめた。市政を変えるのは市民だ。その力は市民一人一人の学習と行動にあることを示す会となった。

 新たな署名は、次の日曜日から街頭で集める。学習会の成果は呼びかけや話し込みに表れるに違いない。



 
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