2022年02月25日 1712号

【ミリタリー・ウォッチング 中山石垣市長の「尖閣」視察 緊迫を作り出す挑発許すな】

 ミサイル基地建設、自衛隊配備問題が重大争点となる石垣市長選挙(2/27投開票)を目前に、現職で自衛隊配備増強を強引に進める中山義隆市長が1月31日、「尖閣諸島を海上から視察した」と発表した。

 行政機関による尖閣諸島の海域調査は2012年9月に東京都が実施して以来、約10年ぶり。同年4月、都知事であった石原慎太郎が「尖閣諸島を東京都が買う」とぶち上げ、これが尖閣諸島をめぐる日中関係悪化の最大の原因となった。中山の「視察」は石原の挑発を引き継ぐ危険なものだ。

 好戦勢力やメディアは、「武器使用を認めた」とされる中国の「海警法」施行(21年2月)以来、尖閣諸島情勢が急速に緊迫を強めているという。ほんとうか。

 実は、14年以降、中国公船が尖閣諸島の領海に入った回数は減っている。この年、安倍政権と習近平政権の間で結ばれた「4項目合意」で、両国が見解の相違を認めた上で事態をコントロールすることになったためだ。中国公船の「領海侵入」はメディアを賑わせているが、一方で、その「領海侵入」がどのような状況でどう起きたのか、事実に即して詳しく報道されることはほとんどない。

 日本国際貿易促進協会職員として河野洋平・習近平会談を通訳した経験も持つ泉川友樹さんは「中国公船が領海に長時間とどまるのは、ほとんどが日本の漁船を追跡したケース。中国は漁業ではなく政治目的とみなしている。日本の『漁船』の中には『愛国保守団体』の船がある」(21年4/17沖縄タイムス)と、事実を伝えることなく対立のみあおる右派メディアを批判する。

 日本の軍拡同様に中国の軍事力強化は東アジアの緊張を高めるが、海警法施行で尖閣諸島の情勢が極度に緊迫している事実はない。

争いでなく平和の海へ

 そもそも、自衛隊の南西シフト強化やミサイル基地建設、米軍との一体化について、政府・防衛省が想定するのはどのような作戦か。

 それは、中国海軍の艦艇や大型商船を西太平洋に出させないための自衛隊主体による東中国海(東シナ海)の海峡・水道封鎖であり、これを突破しようとする中国軍との海洋限定戦争だ。戦闘となれば、双方がミサイル攻撃を主軸に展開する激しい攻撃の応酬となる。決して尖閣などの局地戦ではない。「尖閣ネタ」だけを頻繁に押し出すのには、「作戦」の全体像をおおい隠す狙いがある。

 1月31日、南西諸島軍事化に反対し琉球弧を戦場にするなと訴える広範な運動ネットワーク「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」が発足した。「争いの海」でなく「平和の海」を求める闘いを全国に広げよう。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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