2022年02月25日 1712号

【たんぽぽのように(22) ヘイトクライムを許さない社会を 李真革】

 2021年12月19日、東大阪市にある「在日本大韓民国民団(民団)枚岡(ひらおか)支部」の事務所にハンマーのようなものが投げ込まれ、出入り口の窓ガラスが壊される事件が起きた。20年1月には川崎市で在日コリアンが館長を務める多文化共生のための施設に脅迫郵便物が送られた。21年7月24日、民団愛知県本部と隣接する韓国学校の一部が放火被害、8月30日には在日コリアン集住地域ウトロでの放火事件で倉庫・建物などが焼失する被害が発生した。

 事件はすべて在日コリアンに対する憎悪・差別を背景とした犯罪行為である可能性が極めて高い。ヘイトクライムはそれ自体が深刻な被害を与える犯罪行為だ。こうした一連の動きが、ジェノサイド(大量虐殺)を招いた過去の経験もある。

 ヘイトクライムはより深刻な社会的影響を与える。ヘイトクライムは単なる個人による偶発的犯罪ではなく、社会的につくられた差別構造に起因して起こることだ。根強い在日コリアンに対する偏見や見下し、蔑視などがヘイトスピーチによって増幅、拡散するとともに敵愾心(てきがいしん)をあおり、「目立ちたい」「憎かった」などの「軽々な」理由で犯罪行為を引き起こす。

 つまりヘイトクライムは、誰が加害者になるかもわからず、いつ、どこで在日コリアンが犯罪の被害を受けるかもわからない状況を生み出す。そればかりか、ヘイトクライムが起こった時点で、直接被害を受けていない在日コリアンも、いつ自分たちが被害者になるかもわからない恐怖心を感じる被害者となるのだ。

 ヘイトクライム被害の深刻さから、国連人種差別撤廃委員会は01年以降の4回の審査において毎回日本にヘイトクライム対策を勧告しているが、警察及び検察や裁判所は、表面的な被害のみを処罰の対象にしている。日本政府、地方自治体もヘイトクライムに対して積極的に動いていない。

 ヘイトスピーチ解消法が前文で示しているように、ヘイトスピーチは当該マイノリティに深刻な被害を与え、平穏な生活を奪うとともに、当該地域社会に深刻な亀裂をもたらす。ましてやそれが犯罪行為にいたるとすれば社会にとって大きな脅威となっていくだろう。

 1923年の関東大震災と大虐殺から100年。この100年間、何が変わったのか。この社会はどこに向かうべきなのか。我々は何をなすべきか。(筆者は市民活動家、京都在住) 
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