2022年02月25日 1712号

【現場検証も証人尋問も棄却し次回結審へ 東電刑事訴訟 東京高裁が不当決定】

 2月9日、東京電力旧経営陣の刑事訴訟控訴審第2回公判が東京高裁で行われた。勝俣恒久・元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長の3人が強制起訴された裁判の控訴審は、昨年11月の初公判に次ぐ。

 この日の焦点は、指定弁護士側が求めた現場検証及び島崎邦彦、濱田信生、渡辺敦夫3人の証人申請が認められるかどうかにあった。島崎邦彦・元原子力規制委員長代理は1審無罪判決後、「新事実が出てきた」と法廷での証言を望んでいた。濱田さんは元気象庁職員で、政府の地震調査研究推進本部(推本)が2002年に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」をとりまとめた際、気象庁から推本に出向し、事務局を務めた。「長期評価の策定から公表までの経緯すべてを知る人物」である。

 細田啓介裁判長は3人の証人申請と現場検証をいずれも棄却。指定弁護士は「このような決定は裁判を受ける権利の侵害で、将来に禍根を残す」と異議を申し立てたが、この異議も棄却。裁判長は次回、2人から「被害者の心情に関する意見陳述」を行って結審する旨を告げ、法廷はわずか30分で終了した。

 閉廷後に行われた報告集会では、現場検証と証人申請を棄却した東京高裁の不当な訴訟指揮に対する怒りの声が上がった。一方で、証人予定だった供述調書以外に指定弁護士側が申請していた書面証拠はすべて採用された。その中には、2021年2月、原発事故での国の責任を認め原告側が逆転勝訴した千葉訴訟の東京高裁判決も含まれる。

 裁判はまったく不当な進行だが、決着したわけではない。指定弁護士側に有利な書面証拠もほとんど採用された。結審まで有罪判決を求める闘いが続く。

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