2022年03月04日 1713号

【未来への責任(342) 宇部市 長生炭鉱の強制労働犠牲者】

 2月12日、山口県宇部市の長生(ちょうせい)炭鉱水没事故80周年犠牲者追悼集会に参加し、第2部の遺骨収集に向けてのシンポジウムでパネリストとして討論に参加した。

 長生炭鉱では1942年2月3日、海底炭鉱の坑口から1km付近で落盤事故が起こり、183名が犠牲となった。そのうち136名は日本が植民地支配した朝鮮半島からの労働者であった。今も海に浮かぶピーヤと呼ばれる2本の排気口が浜辺から近くに見える。坑口も海から近いところに埋め立てられてはいるが、痕跡を残す石もある。

 集会の第1部では追悼式が行われ、ピーヤの見える海辺に一人ひとりの名が記されたろうそくが置かれ、参加者は海に追悼の花も投げ入れた。浜辺では、「刻む会」の代表から犠牲者が生前、韓国の家族に送った手紙も紹介された。「ここからは逃げることができない。でも何とか帰って見せる」。それは、まさに強制労働の現場を現在の私たちに伝える告発であった。

 昨今、世界遺産の登録の問題で「江戸時代のこと、1910年以前の話だから朝鮮の労働者は関係ない。戦時中もみんな仲良くやっていた」と事実を歪曲したり、歴史を手前勝手に扱うとんでもない発言が国会で行われている。

 長生炭鉱の坑口から遺骨を掘り出していこうという動きが始まる。シンポジウムは、その意見やアイデアを交換・発案する場になった。2次災害が起こらないよう水中用の探査ロボットを使うことも具体的に提案され注目を集めた。

 私は、軍人軍属の戦没者遺骨問題で、DNA鑑定を、沖縄を端緒に2021年10月から太平洋地域への遺骨と遺族の鑑定を実現させ、韓国人の遺族の問題を国に迫っていることを報告した。討論では、行政や国をどう動かすかのアドバイスを求められた。「行政としては厚生労働省になるが、厚労省の仕事を監視するのが厚生労働委員会。厚労委員会は国会議員が構成しておりここで議論をつくっていくことが大事で、この委員会の国会議員に動いてもらうことが必要」などと説明した。また、「民間で頑張るのか、国を動かすのか」については、「軍人軍属の場合、2016年に法律ができて遺骨を家族にかえすことが国の責務になり、国の責任を追及できた。長生など民間徴用者の場合は法律もないので、民間で動いていくことを先行しながら国に働き掛けていくスタイルが良い」とも提案した。

 今後、プロジェクトチームが作られていく。この取り組みはご遺族の願いを実現するだけでなく、植民地支配や強制労働の実態を全国に知らせ、私たちがなにをすべきかを問題提起する取り組みになる。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

 
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